話題作なく総崩れ?「夏ドラマ」評価分かれる背景 クドカン新作と日曜劇場は厳しい評価の一方…

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こうした物語は、誰もの身近にある病気や命を扱うドラマとしての軽さに嫌悪感を抱く視聴者も少なくないのではないだろうか。たとえエンターテインメントとはわかっていても、それを楽しむ気持ちにはなりにくい。その結果が「日曜劇場っぽくない」「おもしろくない」という声につながっているように思う。

また、賭けがポイントになるはずなのに、その過程はほぼ描かれない。予定調和の手術成功後に、振り返りが少し入るだけ。第3話まででは手術はすべて行われており、天城の賭けの設定が、ドラマ前半ですでに意味を失いつつあるようにも感じる。

ブラックペアン2 二宮和也
『ブラックペアン シーズン2』(写真:『ブラックペアン シーズン2』公式インスタグラムより引用)

本作の出足の評価の鈍さは制作陣も感じていることだろう。これまでの日曜劇場らしくないのは、“新しさ”かもしれないが、視聴者が置いていかれている感がある。しかし、まだドラマははじまったばかり。これからの盛り返しを待ちたい。

キラキラではない月9「海のはじまり」

一方、スタートから視聴者を物語にぐいぐい引き込んでいるのが、フジテレビ月9ドラマ『海のはじまり』と『あの子の子ども』(関西テレビ・フジテレビ)の2本だ。

『海のはじまり』は、28歳の主人公・月岡夏(目黒蓮)が大学時代に付き合っていた同級生・南雲水季(古川琴音)の訃報とともに、彼女に娘がいて自身が父親であることを突然知る物語。

自分の知らないところで自分の子どもが生まれ、何も知らないまま娘が7年間を生きてきたことに、夏は戸惑い、悩む。そこに向き合いながら、亡くなった母親がどのような思いで娘を育ててきたのかに加えて、現在付き合っている彼女の百瀬弥生(有村架純)の気持ちにも思いを馳せる。

海のはじまり 目黒蓮
『海のはじまり』(写真:『海のはじまり』公式インスタグラムより引用)

突然彼の人生に訪れた大きな転機は、周囲の多くの人たちの人生に影響を与えていく。誰も悪くはないが、みんなが苦しみ、傷つく。ときにチクリと胸に刺さる痛みがあり、ときに心温まる優しさに満たされる。

「ラブストーリーの月9枠らしくない」「ストーリーが重すぎる」との声もあるが、近年の月9枠は若者のキラキラした恋愛ドラマだけの枠ではなくなっている。本作が切り込んだテーマは、親子の愛のあり方のひとつ。その愛を丁寧に優しくすくいあげるような描き方に、心を揺さぶられる。

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