乗客増えた?北総線「運賃大幅値下げ」のその後 経営トップが明かした戦略、狙いは当たったか

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平均の運賃改定率はマイナス15.4%だが、一律の値下げではない。

「どこをどう値下げするかは戦略的に決めた」

一部の券種、一部の区界を重点的に値下げしている。まず、通学定期運賃を大幅に下げた。その値下げ率は64.7%。要するに3分の1にしたのだ。たとえば、京成高砂―印西牧の原間の1カ月定期は1万4990円から4990円、6カ月定期は8万950円から2万6950円。「首都圏の大手私鉄とほぼ同じ水準になった」。

普通運賃も値下げした。3kmまでの初乗り運賃は210円から190円という小幅の引き下げだが、10〜20kmという中距離帯は580円を475円に、643円を546円にといった具合に最大105円という比較的大きな値下げをしている。

通学定期を3分の1に値下げしたのは、「沿線自治体の子育て施策とも呼応して、新しい人に移り住んでもらいたい」というまさに経営判断である。そして、普通運賃では中距離帯で比較的大きな値下げをしたのは、「北総線内の移動を促進したい」という狙いがある。

印西牧の原駅
北総鉄道の印西牧の原駅(写真:koro/PIXTA)

通学定期利用は3割増

では、値下げによる輸送人員や運輸収入への影響はどうだったのか。値下げ後1年間(2022年10月~2023年9月)の実績を元に室谷氏が説明してくれた。

まず、輸送人員について見ていくと、通学定期は2019年度に比べて約3割増という大幅な増加を示した。首都圏大手私鉄の平均は2019年度比で約1割減なので、運賃値下げの効果は明らかだという。15.4%の値下げは18億円の減収を意味するが、実際は4.5億円減で踏みとどまった。コロナ禍からの回復もあるが、さすが、思い切った値下げによる利用誘発効果があったということである。

「沿線の高校を訪問して話を聞くと、今までは運賃が高くて電車通学できず自転車で通学していた生徒さんたちが、電車通学に切り替えてくれるようになったということです。学校としても自転車通学よりも安全だということで喜んでもらっています」

都心の学校に向かう流動にも変化があった。

「千葉ニュータウンエリアの通学定期客における駅利用の変化を見ると、京成高砂の比重が増え、新鎌ヶ谷の比重が減っている。これは、運賃が高いため途中の新鎌ヶ谷で新京成線や東武アーバンパークラインに乗り換えて都心に出ていた学生や生徒の一部が、値下げの結果、経路を変更して京成高砂から京成線に乗り通してくれるようになったことを示しています」

通学定期の駅利用の傾向を見ると、京成高砂の利用比率が増え、新鎌ヶ谷の利用比率が減った(画像:北総鉄道)
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