100億の貢献?糞虫の聖地「奈良公園」の奥深き裏側 驚異の自然サイクル!莫大な経済効果生む陰の掃除屋

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芝生に落ちているシカのフン
芝生に落ちているシカのフン。これは糞虫にとっていいフン?(写真:著者撮影)

ただし、ルリセンチコガネみたいな色やサイズ(12.4mm~22.0mm)ばかりだと思っていると、見つけにくいかもしれません。黒くて1cmにも満たない糞虫がほとんどですので、それを意識したら見つけやすくなるかもしれません。

糞虫の経済効果は100億円!?

―こんなに小さな虫が、これだけの量のフンを分解してくれていたとは驚きです。

1頭のシカが1回約120gのフンを1日7回すると仮定すると、約1300頭のシカがいる奈良公園では毎日約1トンのフンがばらまかれる計算になります。それを糞虫が分解して土に還る手助けをしています。

シカがフンをした後、一晩か二晩ほどかけて糞虫がフンを分解すると、粉々というかおがくず状になり、人間に踏まれて芝生の間に入っていくという流れになります。そして、それが土への栄養となり、すくすく育った芝はシカによって食され、またフンになるという循環ができています。

フンを分解する糞虫
このように、日々フンは分解され続けている(提供:中村圭一さん)

―フンを掃除してくれ、芝に肥料もやってくれて、ありがたいですね。

これを人の手で行おうとすると、約660ヘクタール(東京ドーム165個相当)を時給800円、1000人で掃除すると、年間23億円。それに粉砕、焼却して土に還す設備投資も考えると、一例ではありますが年間で100億円ほどかかるかもしれません。

昔に計算した数字なので、人件費が高騰している現在ではもっと大きな額になるかもしれません。

※編集部注 奈良県の令和5年度の最低賃金は936円。

100億については異論も大いにあると思いますが、糞虫について説明するときに、何か数字を入れると「この費用はもっとかかる」「もっと安くできるよ」など会話が広がって面白いんです。だから僕は数字を意識して説明に取り入れるようにしています。

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