「暴落時にだけ利益を上げるファンド」の正体 「ブラック・スワン」的リスクとどうつきあうか

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著者が注目したのはもう一つのヘッジファンド会社、ユニバーサだった。創業者のマーク・スピッツナーゲルは商品先物取引所のトレーダーを経て、オプション取引を専門とするヘッジファンド会社を経営している。同じくトレーダー出身で現在は『ブラック・スワン』著者として有名なナシーム・タレブと共同経営したエンピリカから、その後立ち上げたユニバーサにいたるまで、彼の投資戦略は一貫している。

それは、通常は損を出し続け、金融市場が大暴落したときにだけ巨額の利益を上げるオプションをひたすら買い続ける、という戦略だ。スピッツナーゲルは予測を立てない。何が暴落のリスクになるか、そのリスクがいつ実現するかは誰にも予測できないとして、いつかはわからない暴落時にだけ利益を上げる設計のファンドを組んだ。ちなみに予測不能で世界中が影響を受けるような重大リスクを、タレブはブラック・スワンと呼んでいる。

「静観せず、早い段階でパニックを起こせ!」

本書にはシカゴ商品先物取引所(CBOT)をモノポリーゲーム盤にたとえるくだりがある。CBOTのトレーダーだったスピッツナーゲルは投資の師匠から伝授された戦略を忠実に守り、底辺から頂点めざして着実にステータスを上げていく。

経験と勘で山を張り、当てれば大きいが大損もするトレーダーたちと彼の違いは、リスク管理をしているかどうかだった。損が出ればすぐに売るルールを地道に貫く。「静観せず、早い段階でパニックを起こせ!」。この言葉に象徴されるリスク管理が投資成功の極意だ。

しかし彼は頂点を目前にしてCBOTを去り、オプション取引というゲーム盤に乗り換えた。コンピュータ取引が台頭し、立会場に未来はないと見切りをつけたからだった。オプション取引の世界でも、リスク管理が他のトレーダーたちとスピッツナーゲルの明暗を分けた。

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