JR湖西線「強風・比良おろし」に翻弄された半世紀 運行安定性が通勤通学と新幹線連絡特急の課題

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湖西線の最大の課題は「比良おろし」と呼ばれる強風である。日本海側の若狭湾から比良山地を越えて琵琶湖へ吹き降ろす北西の風で、秋から冬、春にかけて発生する。堅田駅以北で比良山地沿いの高架線を走るため、強風の勢いを真横から受けやすい。1979年と1996年、台風の影響を受けて貨物列車が脱線している。

運休が特に増えたのは2006年以降である。前年の羽越本線の特急脱線事故以降、JR各社は強風による運転見合わせの基準を秒速30m以上から同25m以上と強化。瞬間的な風速でも適用するようになり、2006年度は運休が33回あった。以降、利用者は、ネットで天気予報とJRの運行情報をチェックするのが日課になった。朝に電車が止まると通勤通学ができなくなるし、夕方に運休すれば家へ帰れなくなる。

大変なのは特急サンダーバードも同じだ。湖西線が運転見合わせとなると、東海道本線米原駅経由に変更されるが、大回りとなるため、定刻より20~30分の遅れが見込まれる。敦賀駅で接続する新幹線つるぎは到着まで待機してくれるが、乗り換え客は広大な駅コンコースを小走りで移動せねばならない。気が重い。

防風柵で運休時間は7割減になったが…

そうした不安定な運行は沿線住民の利便性を阻害している。高島市では、湖西線の強風問題が若者定住、人口減少などに影響を及ぼしているとの議論もある。

JR西日本も湖西線の運休防止のための対策を推進してきた。

2008年に湖西線比良―近江舞子間の高架線の山側に防風柵が完成する。レール面から高さ2mの強化プラスチック製で、整備区間の規制値を秒速30mとすることで、運転見合わせ時間が約3分の1以下になると試算。実際、運転規制は2007年に38回発生したのが、2012年に6回まで減少した。防風柵は順次延長され、2019年に計14.6kmが完成する。また、和邇駅に折り返し設備が増設された。特に風の強い志賀駅以北で風速が規制を上回ったときでも、京都―和邇間の電車を運転できるようになった。

ただ、高島市議会2024年3月議会の会議録を見ると、「暴風壁(ママ)が整備される前より、今は悪くなった」との声もあるようだ。

実際はどうなのか。JR西日本に確認すると、「防風柵の設置で運転見合わせ時間が約7割低減」という目標は達成しているという。ただ、年ごとに規制がかかる日数が変動するため、単純に比較するのは困難なようだ。

湖西線には強風「比良おろし」対策の防風柵が山側に設置されている(筆者撮影)
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