JR湖西線「強風・比良おろし」に翻弄された半世紀 運行安定性が通勤通学と新幹線連絡特急の課題

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そこで、JR西日本がX(旧Twitter)で公式に運営している「JR西日本列車運行情報(湖西線)」の運休情報を拾い上げてみた。

湖西線で強風による運転見合わせが多発するのは、例年10月から4月にかけての時期で、風を理由にした運休の日数は、2021―2022期で12日、2022―2023期で5日、2023―2024期で14日とシーズンによって大幅な変動がある。以前は風が強くなったので1~3時間運休して運転再開というパターンが基本だった。しかし、2023―2024期は、前日に「強風が見込まれるため、明日は始発から運休が見込まれています」などとアナウンスし、実際に運転を見合わせる計画運休が増えた。

計画運休とは、台風や雪など天候の変化をあらかじめ分析し、早期に運休を決定し告知する列車運行管理の考え方だ。JR西日本は、2014年10月の台風のときに、夕方から京阪神地区の全列車を運休させ、一定の評価を得た。JR東日本など他社も計画運休を導入した。批判の声もあるが、リスクマネジメントとして方向性は間違っていない。

年十数回の運休がライフスタイルに影響

ただ、JR西日本には苦い経験がある。2023年1月に起きた雪のトラブルだ。東海道本線山科―高槻間の各所でポイントが凍結し、15本の列車が駅間で動けなくなり、計7000人の乗客が車外に出られず立ち往生した。以降、JR西日本はダイヤ混乱時の運行に慎重となった感がある。湖西線の強風対策でも、計画運休の考え方を導入し、運転見合わせの時間が増えた。

湖西線で高島市から京都駅まで通勤している運輸関係者は「安全運行は何より大切で台風や大雪の運休は理解できる。ただ、風での運休はもう少し工夫してほしい」と実感を込めて語る。家族が大学の入学試験を受けたときは、運行の不安定さを危惧して京都市内のホテルに泊まらせたという。台風や大雪による計画運休は年に1~2回なので、利用者も許容できる。だが、湖西線の強風による運休は、多いシーズンだと年に十数日あり、仕事や通学、生活への影響が大きすぎる。

湖西線で電車が止まると、運転区間の北限となる和邇駅、近江舞子駅の駅前ロータリーには送り迎えのクルマがあふれる。大津市と高島市を結ぶ国道161号は大渋滞し、いつ自宅に帰れるかもわからない。マイカーも代替手段にならない。

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