日本の証券業界の見通しは引き続きネガティブ《ムーディーズの業界分析》
VP−シニア・クレジット・オフィサー
主任格付けアナリスト
花立 真紀
日本の証券業界に対するムーディーズの見通しは引き続きネガティブである。これは2008年の金融危機以降変化しておらず、日本の証券会社の業績は、向こう1年から1年半にわたり、低迷し変動性のある状態が続く、とのムーディーズの見方を反映したものである。
ネガティブな見通しの前提となっているのは以下の事項である。
(1)国内経済は11年3月に発生した地震、津波、その後の電力供給不足を一因として低調な状態が続くとみられ、それが株式市場関連業務(プライマリーおよびセカンダリーマーケット)の売買にマイナスの影響を与えるとみられること
(2)欧州のソブリン債務危機、ならびに米国における景気低迷の長期化に対する懸念を背景に、世界の金融市場環境が引き続き不透明であること
(3)世界の金融機関におけるレバレッジ解消およびリスク回避が、日本の証券会社のホールセール業務の収益にマイナスの影響を与えていること
(4)海外業務拡大のコストが最終利益にマイナスの影響を与えるとみられること
国内の低調な事業環境は、日本の証券会社の収益にマイナスである、とムーディーズはみている。ムーディーズのベースラインシナリオでは、日本の成長率は11年下半期には回復するが、通年での実質GDP成長率はマイナス0.5%程度(以前の予想より約1ポイント低い水準)とみている。ただし、12年には復興への取り組みを背景に回復すると予想している。