福島の病院を苦しめる原発事故補償の難航と人材流出、手掛かりすらない再建への道
しかし、本補償とはいうものの、カバーされる損害は一部にとどまる。今回、補償されるのは営業上の損害(原発事故による「逸失利益」=避難指示等に伴う減収分+追加的費用)などに限定され、避難対象区域に残された建物・設備や土地に対する補償は対象外。
「財産状況の確認や想定が難しいことなどから、継続的に検討を行ったうえで改めてご案内させていただきます」(東電発表資料)としている。その結果、警戒区域内にある病院は債務を抱えたまま、身動きが取れない状態が続く。
冒頭の小高赤坂病院では、1981年の開設以来、「地域に根差した小規模の開放型の精神科病院」(渡辺院長)を目指してきた。ここ数年の経営は順調で、2011年度には看護学校の実習病院となることも決まっていた。
それが、原発事故で暗転。診療そのものができなくなり、借入金の返済も滞った。転院した患者から「いつ病院は再開するのですか」との連絡が来るものの、「何も答えることができないのが歯がゆい」と渡辺院長は語る。
原発事故は、「緊急時避難準備区域」(第一原発から20~30キロメートル圏で警戒区域の外側)に立地する病院にも、深刻なダメージを与えている。
南相馬市の中心部にある雲雀ヶ丘病院(病床数254床、精神科)は原発事故後、「屋内退避区域」に組み込まれたことで診療休止を余儀なくされた。同区域の指定解除後の6月22日から週2日に限って外来診療再開を果たしたものの、医師確保の見込みが立っておらず、現在も入院患者の受け入れができていない。