長男、長女は、地区青年部のメンバーだ。お祭りをはじめとする自治会行事の担い手になっている。月に一度の部会、終了後の食事会は彼らの楽しみであり、早起きでしんどいはずの子どもたちだが、引っ越しという言葉は聞いたことがない。
私も、地域での勉強会や市民活動を通じて多くの友人ができた。青年部の仲間もいる。まず思い浮かぶのは、引っ越しと聞いた仲間たちの悲しそうな顔だ。連れ合いも同じで、ママ友とのつながりを思うと、どうしても後ろ髪を引かれるらしい。
周囲の移住者を見てみる。すると、NPOを立ちあげたり、子どもたちの居場所づくりをやったり、マルシェを出店したり、いろんな活動を楽しんでいる人たちが多い。
こうやって考えてみると、「定住者」は、他者との<つながりづくり>に成功した人たちが中心だ。それが「賃貸生活」から「持ち家生活」に変わる大きな動機になっている。もちろん、家を持てば、引っ越しのハードルも一気にあがる。
駅近の賃貸生活を楽しんでいる人たちにとって、こうした人の輪に加わるきっかけを持てるかどうかが重要なポイントだ。でも、私の知る限り、小田原も含めて、そうした施策を有効に打ち出している自治体はあまり多くない。残念なことだ。
アメリカに夫婦2人で住んでいたときの出来事
「人間のつながりをつくるって、言葉でいうほど簡単なことじゃないよね」
私の問いかけを聞いた連れ合いは、2人でアメリカに住んでいたときのことを話しはじめた。
当時、知り合いのいなかった私たちは、暇つぶしに近所の「公共図書館」に足を運んだ。日本で図書館といえば、本を借りる場所、静寂に包まれた空間だ。だがアメリカでは、訪れた人たちが楽しそうに話しており、なんとなく雑然とした空気を漂わせていた。
入り口に大きな掲示板があり、そこにかなりの数のチラシが貼ってあった。イベントやサークルの告知がほとんどだった。連れ合いはそのなかから英会話教室の募集を見つけ、良いチャンスだからといって、早速、連絡をした。
「本当に保守的な先生だったんだけどね」
彼女は懐かしそうに言う。だが、やさしい先生で、外国人を近所に住むアメリカ人と友達にしようと、生徒とその家族をたびたびホームパーティーに招待してくれた。
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