「入ることがゴール」と若者が考えてしまう理由 自分が選択した人生をいかに肯定できるか
鳥羽:雰囲気か偏差値って、まさに世間が作った欲望に踊らされている証拠だと思うんですよ。きっと就活も同じような仕組みがあるのでしょう。「楽しさを発見する過程を支える」っていう部分が高校でも大学でも顧みられていない。こういう自己疎外によって社会になじんでいく仕組みが昔から受験をはじめとする教育制度には組み込まれていて、それが若い人たちを不幸にする原因になっているんじゃないかと思います。
舟津:「欲望」という言葉でうまく表現していただき、ありがとうございます。基本的に人は欲望のとおりに動くもので、欲望は最も強靭な原動力だと思っています。だけど、いい大学や会社に入るというのは、およそ社会に設定された欲望なんですよね。「あなたたちはこの大学/会社に入らないと幸せになれないですよ」っていう。特に受験の場合は、親御さんの欲望も大きいと思います。
加えて、受験産業の方々は合否にしかインセンティブを設定しないので、入学までしか面倒みない。それは当たり前です。かくして社会が設定した欲望は、入学時点で充足される。ところが受験生当人にとっては、入った後のほうが絶対に大事なはずなんです。
鳥羽:そのとおりです。学生たちもそれに気づかず、周りの期待に応えているだけなんです。
お金を払った瞬間しかビジネスは面倒をみない
舟津:楽しさを見つけるっていうのは、自分の欲望を満たすように生きることであって、実はそれなりに経験や訓練を積まないと見えてこないもののはず。「これいいな」と思えるものを発見するのは簡単ではないんです。
そういう意味でテーマパークっていうのは、聞けば聞くほど欲望の解放がうまいと感じます。授業の題材にしたとき、USJやディズニーランドの魅力を語って止まらない学生の多さに驚きました。学生たちは教科書の数千円は躊躇しますが、USJの年パスにはすっとお金を出す。
鳥羽:そうなんですか。USJってそんなに面白いんだ。行ってみたくなりました(笑)。