「入ることがゴール」と若者が考えてしまう理由 自分が選択した人生をいかに肯定できるか

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
舟津 昌平(ふなつ しょうへい)/経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師。
舟津 昌平(ふなつ しょうへい)/経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師。1989年奈良県生まれ。2012年京都大学法学部卒業、14年京都大学大学院経営管理教育部修了、19年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。23年10月より現職。著書に『制度複雑性のマネジメント』(白桃書房、2023年度日本ベンチャー学会清成忠男賞書籍部門受賞)、『組織変革論』(中央経済社)などがある。

鳥羽:雰囲気か偏差値って、まさに世間が作った欲望に踊らされている証拠だと思うんですよ。きっと就活も同じような仕組みがあるのでしょう。「楽しさを発見する過程を支える」っていう部分が高校でも大学でも顧みられていない。こういう自己疎外によって社会になじんでいく仕組みが昔から受験をはじめとする教育制度には組み込まれていて、それが若い人たちを不幸にする原因になっているんじゃないかと思います。

舟津:「欲望」という言葉でうまく表現していただき、ありがとうございます。基本的に人は欲望のとおりに動くもので、欲望は最も強靭な原動力だと思っています。だけど、いい大学や会社に入るというのは、およそ社会に設定された欲望なんですよね。「あなたたちはこの大学/会社に入らないと幸せになれないですよ」っていう。特に受験の場合は、親御さんの欲望も大きいと思います。

加えて、受験産業の方々は合否にしかインセンティブを設定しないので、入学までしか面倒みない。それは当たり前です。かくして社会が設定した欲望は、入学時点で充足される。ところが受験生当人にとっては、入った後のほうが絶対に大事なはずなんです。

鳥羽:そのとおりです。学生たちもそれに気づかず、周りの期待に応えているだけなんです。

お金を払った瞬間しかビジネスは面倒をみない

舟津:楽しさを見つけるっていうのは、自分の欲望を満たすように生きることであって、実はそれなりに経験や訓練を積まないと見えてこないもののはず。「これいいな」と思えるものを発見するのは簡単ではないんです。

そういう意味でテーマパークっていうのは、聞けば聞くほど欲望の解放がうまいと感じます。授業の題材にしたとき、USJやディズニーランドの魅力を語って止まらない学生の多さに驚きました。学生たちは教科書の数千円は躊躇しますが、USJの年パスにはすっとお金を出す。

鳥羽:そうなんですか。USJってそんなに面白いんだ。行ってみたくなりました(笑)。

次ページ人生はテーマパークになりえない
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事