もはや「米中サイバー戦争」は避けられない? 米国防総省現役のサイバー専門家が警告

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サイバー空間が、実際の時・空間と大きく違うのは、地球上の全ての国や人が、いとも簡単に共有できるという点だ。ネットに接続できる環境にいれば、地球上のどこからでもアクセスでき、そこには国境も時差も存在しない。つまりサイバー空間においては、国家間の確執や問題が戦争に発展する危険性があるだけでなく、標的はネットにつながる個人全てということになる。

米中の「サイバー戦争」はすでに起きている?

大きく報道されていないだけだが、すでにサイバー戦争は現実に起きている。例を挙げればきりがないが、例えば2008年の南オセチア紛争である。ジョージア(旧グルジア)とロシア間で起こったこの戦争では、陸空海戦すべてが行われ多数の死傷者を出す結果となったが、その間、ジョージアの金融機関や複数の政府ウェブサイトが、ハッカーにより遮断された。

同年にはイランの核施設を標的にしたStuxnetウイルスの存在が発覚。さらに2013年に発表された米サイバー大手Madiant社のレポートでは、中国人民解放軍が、数年にわたりアメリカを主にターゲットとするサイバースパイ活動を行っていたことが明らかにされた。この活動により被害をこうむった世界の組織数は、実に141にも上回るという。

さらに、今年7月にかけて、米政府職員約2200万人超(家族など含む)の個人情報が流出した事件も衝撃的だった。FBIが主導となり本格的な捜査が開始されたが、この事件ではアメリカの国外(中国が主要な容疑者として疑われている)から、アメリカ政府ネットワークへの侵入がみられた可能性が極めて高いとされている。

こうした流れからも、国家がサイバー戦争に備える必然性は明らかだ。しかし同時に民間レベルの対応も急務だ。この戦争の標的は国、民間を問わない。民間も深刻な被害を受け続けており、増加の一途をたどっている。

2015年のシマンテック・インターネットセキュリティレポートによれば、2500人以上の従業員をもつ大企業においては、6社に5社がサイバーアタックの標的とされたとされている。これは前年度比で実に約40%増の数字だ。

また、日々進歩するセキュリティ対応により一部のマルウエア(ウイルス感染ソフトなど)が制圧される一方、金銭やデータ開示をユーザーに求める身代金要求型プログラム「ランサムウエア」の被害については、なんと2倍以上にも被害数が跳ね上がった。

ランサムウエアは、トロイの木馬などのプログラムとしてパソコン内部に侵入する。そして勝手にファイルを暗号化したり、パスワードを設定するなどして、データにアクセスできなくしてしまう。しかもそれを解除するために、身代金を要求するという悪質なものだ。まさに日進月歩で防御技術もサイバーウェポン(武器)も進化中だ。

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