鉄道会社が続々参入「eスポーツ」狙いはどこに? 大手私鉄やJR、大会開催や体験施設など開設
鉄道事業者にとってeスポーツは「異分野・異業種」だ。イベント会場として施設を提供するだけではなく、eスポーツを理解した、あるいは体験した担当者と、運営ノウハウを持ったパートナー企業が不可欠だ。
たとえば東京メトロが資本参加しているゲシピの「eスポーツ英会話」は、ゲーム内で英語圏の友人と対戦、チーム連携するための会話を学ぶ機会を提供する。実際のスポーツでは現地に留学しなければ不可能だった体験ができる。
京王電鉄は「TechnoBlood eSports(テクノブラッドeスポーツ)」に出資している。東京メトロと同様、外部企業と連携する共創プログラムにおいてeスポーツ事業を採択したパートナーだ。「eSPORTS LAB」の運営を手がけている。
「TOKYO METRO CUP STREET FIGHTER 6」と「京王電鉄eスポーツ祭」を運営した会社は「JCG」だ。2013年に設立され、eスポーツ大会やイベントの運営、eスポーツを通じたマーケティング企画支援などを手がける。現在は年間1000回以上に及ぶ大会運営の実績がある。JCGは発足時から「Japan Competitive Gaming」というオンライン大会サイトを運営しており、現在も継続中だ。個人が始めたサイトが成長し、現在は日本テレビ放送網の出資を受けて、日本テレビグループの会社になっている。
eスポーツの黎明期から生き残った人々や企業が、いまは参入企業のアドバイザーとして導く立場だ。eスポーツチームも単なるプレーヤーではなく、ビジネスとして成立するようになった。鉄道事業とeスポーツという縁のなさそうな関係も、こうしたパートナー企業のおかげで参入しやすくなっている。
eスポーツの「教育的成功」と「興行的成功」
「京王電鉄eスポーツ祭」で、JCG代表取締役の松本順一氏と何年かぶりに再会した。彼と私は「matsujun」「sugijun」の名で、一時は共にeスポーツ情報サイトを作った仲である。
「杉山さん、観客を見てよ。お洒落な女の子たちがたくさんいるでしょう。推しのプレーヤーを応援するために、お洒落してイベントに来てくれたんです。僕らが出会った頃とは違う景色ですよ。eスポーツはそんな時代になったんです」
着飾ってキャスター付きのトランクを引いてきた少年少女は、どこからやってきたんだろう。会場に入る前も、駅へ向かう親子が「楽しかったね」と会話していた。これもうれしかった。私はひとり浦島太郎のような気持ちになった。もう感動しかない。
かつてeスポーツを取材していた頃、eスポーツプロデューサーでゲームクリエイターの犬飼博士氏と「日本のeスポーツの成功とはなにか」を考えていた。プロゲーマーが誕生し、大規模なゲーム競技会が行われたら大成功だ。しかし、オリンピックスポーツのように海外のプレーヤーと交流し、互いの国や地域を知り尊重すること。たとえば5人対5人のチーム対戦ゲーム「カウンターストライク」では仲間とのコミュニケーション、協調性、戦略性がなければ勝てない。それができる人間を育てること、つまり教育と世界の平和に寄与することがeスポーツの「スポーツとしての成功」だと思っていた。
鉄道事業者にとってeスポーツは「教育事業」の要素が強いようにみえる。それは正しいあり方だと思う。これからは「興行的な成功」にも挑戦してほしい。沿線の人々を幸せにする方法として、eスポーツはとても良い題材だとあらためて思った。鉄道会社やそのグループ会社でeスポーツ事業に携わる人々の「2つの成功」を心から祈っている。
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