ウォルマート「バイ・アメリカン運動」の難題 「製造回帰キャンペーン」で起きていること
ウォルマートの「メードインUSA」の努力は2013年に遡る。なぜ、このような活動を始めたのだろうか。それはウォルマートが進める低価格路線がアメリカ人の仕事を奪っていると批判する組合や批評家が多かったからだ。
この時期、確かに、ウォルマートは増大するプレッシャーに晒されていた。ウォルマートは2023年までに米国製商品の購入を2500億ドルに伸ばすと表明し、米国メーカーから買うことにまい進することを宣言した。
AMERICA'S WAYの振り子がスイングする
ボストン・コンサルティング・グループのマネージング・ディレクターであるハロルド・ゼルキンは、ウォルマートやスポーツ・ウエア・メーカーのナイキのような大手輸入企業のバイ・アメリカンの動きは、中国の人件費が米国の61%(5年前は17%)のレベルに達したことへの対応だと言う。サプライ・チェーンと輸送費を考えれば米国メーカーは今や競合できる、とゼルキンは言う。
「米国に好ましい方向に振り子が戻って来た」とゼルキンは話す、「ただし振り子は、いつでもまた逆戻りする」。
振り子の逆戻りは、SFHカンパニー合同会社の販売担当副社長であるジャック・スローンが心配していることでもある。スローンが製造しているのはトラベルマグ。現在ウォルマートの店の棚に並んでいる商品よりも約1.50ドル安い6.99ドルの店頭販売価格が可能な米国製のマグを売り込む望みを持ってベントンビルにやって来た。
彼の売り込みはうまく行き、バイヤーは彼にバレンタイン・デー、母の日、バック・ツー・スクールのプロモーションでウォルマート店舗で行うテストランに向けた提案を出すように要求した。
しかし、それにもかかわらずスローンには心配があった。「ウォルマートがやっていることは本当に良いことだと思うが、どれだけ長期にわたってその方針を続けるのか様子を見ている」とスローンは言う。「もしこれが単に周期的で一時的なものであるならば、彼らは10年後にはまた海外にそれらを持って行ってしまうかもしれない」。