楽天モバイル「プラチナバンド」ともう1つの武器 使えるツテをすべて注いで業界首位を目指す

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6月27日時点では東京都内の1つの基地局からスタート。関東地方から順次拡大していく方針だ。楽天モバイルの提出した開設計画では、10年で544億円を投資し、700MHz帯をカバーした基地局を1万661局開設する計画だ。

過去の例を見るとイー・アクセス(現ソフトバンク)の700MHz帯の開設計画では、2015年からの10年間の設備投資額が1439億円、開設基地局数が1万4994局という規模だった。投資額と開設基地局数の規模に大きな差がある。

ただし、すでに1.7GHz帯で全国に展開し、5Gの周波数割当ても受けている楽天モバイルと、当時のイー・アクセスを単純に比較することは難しい面もある。楽天モバイルにおいて今回獲得したプラチナバンドの重要度が相対的に低いことを示唆しているのかもしれない。

5Gでは三大都市圏でエリア大幅拡大

楽天モバイルは、5G基地局の設置を急速に進めており、現在1.7万局を突破したと発表した。特に5Gのエリア整備で当面の主力となるSub6周波数の整備では進展があった。衛星との干渉問題が解決され、関東圏でSub6エリアを最大1.6倍まで拡大できる見込みが立った。また、東海地方では1.7倍、近畿地方では1.1倍のエリア拡大をすでに完了している。

関東エリアではSub6エリアが最大1.6倍まで拡大する(筆者撮影)

5Gは3.7GHz帯の電波を使用するが、この周波数帯は衛星放送受信設備も利用している。そのため、衛星地上局付近では5Gの出力を抑える必要があった。

しかし、対策工事の進展によりこの問題が解消された。その結果、5G基地局の出力を増強できるようになった。楽天モバイルは、この出力向上を5月から年内にかけて順次実施する方針だ。

三木谷会長は「出力アップにより、5Gを使っていただく方の1基地局あたりのトラフィック量が約2.3倍になる」と述べ、5G利用が浸透していることを強調した。

出力増強で5Gユーザーのトラフィックが2.3倍に拡大。接続ユーザー数も1.5倍に増えた(筆者撮影)

また、三木谷氏は4Gと5Gの間のハンドオーバー(切り替え)がスムーズに行えることも、楽天モバイルの強みとして挙げた。つまり、街中を動き回っている時に、4Gと5Gの切り替えのタイミングで通信が途切れたりすることなく、快適に利用できるネットワークになっているという。

この衛星通信の出力問題はKDDIとソフトバンクも同様に直面していた。KDDIは6月にSub6エリアを関東地方で2.8倍に拡大したと発表している。

KDDIローミングこそ真の最終兵器か

楽天モバイルには、もう1つの切り札がある。KDDIとのローミング協定だ。

この協定により、楽天の整備が追いついていない都心の商業施設内などで、KDDIの4G LTE回線を借りてエリアを補完できる。当初、このローミング協定は楽天の新規参入を後押しするための一時的な措置で、段階的に縮小する予定だった。

ところが、三木谷会長は「KDDIとのローミング系のネットワークをさらに拡大していく」と述べた。実際、昨年4月にKDDIと新たに提携したローミング協定に基づき、都心の一部繁華街でのローミング提供を開始している。
【2024年7月3日20時20分 追記】上記のローミング協定の記述について、初出時から修正しました。

他社の力を堂々と借りられることが、楽天モバイルにとって真の“最終兵器”なのかもしれない。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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