年間1000万円の副収入を得る医師は、医師全体の0.07%ほどにすぎない。だが高額受領者は、大学教授や学会の重鎮といった医学界で影響力が強いKOLだ。製薬会社に有利な言動をした場合、結果的にほかの医師の処方や研究が、公正さを損なう可能性がある。
新薬を承認する厚生労働省の審議会では、過去3年のうち審議する製薬会社からの受取額が年間500万円を超える年度がある場合は審議に参加できない。年間50万円を超える年度がある場合は議決には参加できない。
製薬マネー透明化へ
医師による活動の公正さを担保するには、透明化が必要だ。
米国では13年、製薬会社から医師への10ドル以上の支払いは、医師の個人名と共に公開することが法律で義務づけられた。
日本では、製薬会社が13年から自社のホームページで医師への支払いの情報公開を始めた。翌年には日本学術会議が、製薬各社でつくる日本製薬工業協会に対し、各社の公開情報を統合しデータベースを作成するよう提言した。
しかし、製薬協はデータベースを作成しなかった。
そこで当時朝日新聞の特別報道部に在籍していた私は、部内の取材班でデータベースを作成。患者が自分のかかりつけ医の利害関係をチェックできるよう一般公開する予定だったが、朝日新聞は公開に踏み切らなかった。医師や製薬会社から訴えられることを懸念したのだ。取材班は納得がいかない。連名で法務部に申し入れ書を提出した。
「われわれ取材班は、人の命と健康を預かり国家資格を有する医師は政治家に匹敵する公人だという認識のもと取材を重ねてきました。医師が職務で製薬会社から得た金銭は、原資が公的保険と税金で賄われていることもあり、個人情報ではないと考えます」
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