角川ドワンゴが通信制高校に情熱を注ぐワケ 来春をメドに沖縄で「ネットの高校」を開設
1991年に2200万人超だった14歳以下の人口は、2013年には1600万人前後と減少の一途をたどってきた。その一方で、小・中学校における不登校の生徒数は、6万人台から1990年代後半に12万人超まで増加。その後、現在に至るまで高止まりしている。つまり、不登校児童の割合は年々高まっているわけだ。
「原因はいろいろあると思うが、今の不登校の人たちはネットに逃げている。でも、そういう人たちは、デジタル時代の中では普通の人より適性があるかもしれない。僕らであれば、彼らの隠れた財産を引き出していけるのではないか」(川上社長)
川上社長と親しい、批評家の大塚英志氏はこう代弁する。「ニコニコ動画は、ネット右翼を増やしてしまったり、ひきこもりやニートの逃げ場になったりして、社会を悪くした面がある。それに対してどうするのかという答えの1つとして、彼らをもう一回社会に戻すための仕組みを作るのが、川上の考える学校の構想。社会的な責任としてやる、と本気で考えているようだ」。
生徒募集や事業環境に難問
しかし、学校運営は、企業の社会的責任や贖罪の想いだけで務まる事業ではない。たとえば、生徒募集。「一般的な高校とは異なり、通信制高校はどこに顧客が発生するかがわかりにくい」(前出の通信制高校幹部)。
通常はウェブ上などでマーケティングを実施して生徒を募集するが、それだけで採算ラインとされる500〜700人の生徒を集めることは難しい。既存の通信制高校は、芸能プロダクションやスポーツクラブなどと提携することで、一定の需要を安定的に確保する仕組みを構築している。そのためのネットワーク作りが新規参入にあたっての障壁となる。
ニッチな業界でありながら、競争環境が激化しているのも気がかりな点だ。2009年には18.6万人だった通信制高校の生徒数は、少子化の流れの中で、2014年は18.3万人に減少している。その一方、通信制高校の数は、構造改革特区における規制緩和などの影響もあり、同じ期間中に205から231まで増えている。
こうした競争激化を背景に、各運営母体はサービスの内容を拡充。川上社長が自社で運営する場合の強みと説明したITを活用した双方向授業も、「iPadなどを導入し、ネットスクール的な側面を強めている高校が増えている」(前出の通信制高校幹部)中で、どれだけ優位性を発揮できるかは疑問の余地がある。
さらに視野を広げ、日本国内におけるオンライン教育という観点で見ても、プレーヤー数は増加傾向にある。NTTドコモや東京大学などが参画する「JMOOC」や、ベネッセとの提携で日本市場に本格参入した米ユーデミーといった大手のほかに、スクー、シェアウィズなどのベンチャーも入り乱れる群雄割拠の状態だ。KADOKAWA・DWANGOは一部授業を一般にも公開する意向だが、広義のオンライン教育においてもライバルの数は決して少なくない。
「ネットによる通信教育は僕らの得意分野。いろいろと派手なことをやるので、差別化はできる」と意気込む川上社長。その成否は、贖罪の想いをどれだけビジネスとして昇華できるかに懸かっている。
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