ROEだけじゃない、気候変動も大きなテーマ OECD玉木事務次長に聞く

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――日本は今年、「コーポレートガバナンス元年」と言われますが、とくに関心が高いのがROE(株主資本利益率)をめぐる議論です。

企業の評価としてもっとも端的な指標の一つであることは間違いない。しかし、ROEがすべてではない。ある種、問題点をふるい出すためのチェックリストとしては機能すると思う。

機関投資家はもっと投資先に関与を

――OECDプリンシプル改定のプロセスの中で、いくつかの外部要因の変化も取り上げられたようですね。

「企業金融の変化」「企業がキャッシュを貯め込む傾向にあること」「機関投資家の役割の増大」の3つある。われわれも議論をしながら考えているところだが、はっきりした答えが最終的に出るか、まだわからない。

OECD加盟国における新規株式公開の件数は、金融危機が起きた2008年を境に半減している一方、一般企業の社債発行額は2008年を境に1.8倍に増加している。証券取引所が資金調達の場としての機能を低下させているということだ。これだけ多くの社債が発行され、投資家のポートフォリオの中で重要な地位を占めている。企業の経営に対する声の一つとして、社債権者をどう取り込んでいったらいいか。一方で、社債の流動性があまりに低く、その意味でもやや心配している。コーポレートガバナンスの議論の中では、株主と社債権者を区別している。

企業の現金保有は、それ自体悪いわけではない。少なくとも金融危機後は世界的な傾向だ。問題は、それが投資や株主還元という形で手持ちのキャッシュを減らしていくことがないだろうかということ。

なるべく低コストでインデックスを上回る運用をしたいという機関投資家が増えてくるに伴い、もう少し積極的に投資先に関与して欲しいとわれわれは思っている。(パッシブ運用を行う)そういう投資家ばかりになると、コーポレートガバナンスとしての機能が低下する。他方で、機関投資家が運用を他の人に委ねる、そういうインベストメントチェーンが長くなると、最終的に社会全体の手数料が山のように膨らむ。そして、それがほかの投資家に見えない。手数料自体、ある程度透明化できないかと思っている。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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