振興銀への免許は不当、行政検証委員会が指摘した金融行政の「落ち度」
これについて、草野委員長は「内部資料は見ているが、守秘義務があり具体的には書けない」と説明。指導監督の評価は「最初の検査時期が遅れたことを除けば、特段の落ち度は認められず」と記すだけだった。
だが、振興銀行が急激に資産規模を拡大したのは破綻前の2~3年の間。最初の検査時期の遅れよりも、直近の“膨張”を金融検査の中でどのように認識していたのかが、委員会における重要な検証ポイントでもあったはず。
経営破綻に至るまで、振興銀行への金融検査は3回実施された。1回目は開業から1年半後の05年11月~06年1月、2回目は07年4~10月、3回目は09年6月~10年3月。通常、金融検査は3カ月、長くても6カ月程度だが、同行の検査は回を重ねるごとに長期化している。
例えば、07年は従来の中小企業向け貸し出しから、貸付債権の買い取りを主力とする事業構造転換を図った時期と位置づけられる。だが同年8月、債権買い取りの方針に反対した執行役4名が辞任を表明する。
これは2回目の金融検査中のことで、金融検査官は「経営管理上の観点からどのような問題意識をお持ちか、ご説明願います」と、質問表を出すなど、経営の混乱ぶりを十分認識していたとみられる。
また、破綻の大きな原因となった債権買い取りについて、振興銀行から不良債権を買い取った整理回収機構は8月23日、元役員7名に対する一部買い取りの決済責任を問い、50億円の損害賠償を求める訴訟を起こした。機構によれば、振興銀行は07年12月から09年1月にかけて、SFCG(旧商工ファンド、09年2月に経営破綻)から合計1705億円の債権を買い取っている。
17回に及んだ一連の買い取り時期は、2回目と3回目の金融検査の間でもある。3回目の検査長期化は検査妨害が原因だったが、その中でも振興銀行の貸し付けは約1000億円、高金利を売りにした預金が約2000億円も増えた。報告書の中で、貸付債権買い取りや貸出残高拡大に対する金融検査内容を検証した形跡は見られない。