池上彰が「国公立大学の無償化」を提言する理由 "Fラン"大学は淘汰、専門職大学は増加と予測

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なお奨学金という言葉は、国際的には進学によってもらえる返済不要のお金のことを指します。

いずれ返さなければいけない、日本で「貸与奨学金」などと呼ばれているものは、本来は「学費ローン」です。いずれ返すという意識が薄いまま借りてしまう人が多い現状を鑑みると、日本でも「学費ローン」と呼ぶようにしたほうがいいでしょう。

では大学進学にまつわる奨学金問題は、2040年に向けてどうすべきなのでしょうか。

高校を無償化すべきだと前述しましたが、私の個人的な希望をいえば、高校だけでなく大学まで学費を所得制限なしで完全に無償化すべきだと考えています。2040年に向けて、実現してほしいことのひとつです。

大学の学費が無償化されれば、家計の状況に関係なく、大学に行く子どもたちが増えていきます。そうして高度な教育を受ける人が増えれば、優秀な人材の裾野が広がり、長い目で見て日本の発展につながっていくはずだからです。

現在は年収270万円(目安)までの世帯のみ大学無償化、年収380万円(目安)までは授業料の一部を免除、という制度があります。また3人以上の子どもがいる多子世帯は、2025年度から学費を無償化とすると発表されています(ただし卒業後の子が扶養を外れ、扶養する子どもが2人以下となると対象外)。

フランスとアメリカの場合

所得制限なしでの大学無償化は無理だと思うかもしれませんが、フランスの場合、EU加盟国国籍の人がフランスの国立大学に入ると修士号まで進んでも5年間で合計996ユーロ(約16万円、1ユーロ=160円で換算)しかかかりません。格安です。日本も少なくとも国公立大学は、無償化すべきでしょう。

一方でアメリカは、2022~2023年の大学の年間学費の平均が私立大学で3万9723ドル(約596万円)、州立大学(州外学生の学費)は平均2万2953ドル(約344万円)、州立大学(州内学生の学費)は平均1万423ドル(約156万円)となっています(2022年9月US News調べ、1ドル=150円で換算)。

これを4年、あるいは修士まで6年など通うとなると、私立大学なら数千万円が必要だということです。

アメリカはその分、給付型の奨学金が充実しています。ハーバード大学やスタンフォード大学を卒業できるレベルの成績優秀者であれば学費は無料ですから、完全実力主義ですが、そこはバランスが取れているといえるかもしれません。

フランスとアメリカで大学の学費にこれほど違いがあるのは、考え方、信条の違いによるところが大きいのです。

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