斬新!遺伝子情報に基づいた「究極の美容液」

DNA分析で自分だけのスキンケアを調合

ロンドンにあるジーンユーの店舗(写真:Lauren Fleishman/The New York Times)

ジーンユーの理屈はこうだ。市販のスキンケア製品には肌によいと思われる原料がたくさん含まれているかもしれないが、それらは必ずしも使う人個人の肌に必要なものではない。

たとえば、ある人のMMP1遺伝子がコラーゲンをゆっくり減少させるようプログラムされていたとしたら、コラーゲンの生成を促すとされるクリームを何年間もたっぷり使うのは、ジーンユーの論理では、時間(とおカネ)の無駄だとなる。そんなことをしても、時計の針を超高速で戻すことはできないし、また毛穴が詰まるなどのダメージも起こるかもしれないという。スキンケアも薬と同様に、多ければよいというものではないようだ。

「当社が考えているのは、使用者の肌が代謝できる、適度な濃さの製品を提供することだ」。こう話すのは、ジーンユーの創業者で、インペリアル・カレッジ・ロンドンの教授でもあるクリストファー・トゥーマズーだ。

トゥーマズーは皮膚科医ではない。彼は電気工学を学び、1型糖尿病患者のための人工すい臓を開発、また聴覚障害の子どもが音を聞けるようになる人工中耳、さらにはワイアレスの心拍数モニターなどを開発した。彼がDNAに興味を持ち始めたのは10年以上前。息子が遺伝性疾患を持っているとわかってからだ。

ジーンユーのクリエイティブ・ディレクターは、驚くなかれ、ロックバンド「デュラン・デュラン」でキーボードを担当するニック・ローズだ。彼は化粧品には詳しく、1984年の自分の結婚式では、花嫁と同じイヴ・サンローランのピンクの口紅をつけていた。

トゥーマズーによると、1年半にわたり二重盲検試験(既存の製品と新しい製品のどちらかを、被験者と実施スタッフともに、どちらを使っているかわからない状態で使わせる試験)を行ったところ、ジーンユーの製品では1年間で30%までしわが減少したという。

肌には環境が大きく影響するとの反論も

この試験結果は、まだ正式に公表されてはいない。だが、スタンフォード大学の准教授で皮膚手術を専門とするS・タイラー・ホールミグは、この結果に対して懐疑的だ(ただし彼は、ジーンユーが行っていることは「本当にすごいし、見事だ」と表現する)。

ホールミグは言う。「肌の老化を加速させるのは環境だ。一卵性双生児でも、1人が中米のベリーズで育ち、もう1人がベルギーで育ったとしたら、2人の肌はまったく違って見えるはずだ」。彼によると、近年では抗酸化物質が取り沙汰されているが(過去10年でブルーベリーの摂取量を増やした人も多いことだろう)、抗酸化物質により老化のサインが表れにくくなると示された研究は、同業者評価を経た主要な研究では見当たらないという。

トゥーマズーは、DNA分析の次のバージョンでは「エビジェネティクス」にフォーカスし、環境に関する問題によりよく対応できるようにする計画だという(エビジェネティクスとは、つまりはライフスタイルが原因となって、遺伝子のスイッチが入ったり入らなかったりする仕組みだ)。また、肌の状態に関連するほかの遺伝子も分析に含め、そうすることで顧客に合ったカスタマイズの選択肢をもっと増やす計画だとも言う。たとえば、肌の弾力性や色素過剰をコントロールする遺伝子などだ。

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