仏で極右躍進、マクロン氏「解散総選挙」は無謀か 7月26日のパリ五輪開幕を控える中で重大決断

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イギリスのメディアは2016年にイギリスのキャメロン元首相がEU離脱で国民投票を決断した結果、逆の結果が出て辞任に追い込まれた例や、その政権を受け継いだメイ政権が政権基盤を固めたいと1年前倒しで行った総選挙で多くの議席を失い、結果的にブレグジットに予想以上の時間がかかった例も挙げ、マクロン氏の賭けは無謀と評している。

EU議会選の結果とマクロン氏の議会解散総選挙の発表を受け、為替は政治リスク懸念から一時ユーロ安となった。政治リスクはフランスだけではない。ドイツでも、極右政党であるドイツのための選択肢(AfD)が、オラフ・ショルツ首相率いる社会民主党(SPD)を抑える勢いだ。欧州では保守派がEU議会での支配を強化し、ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏が2期目の当選を果たす可能性が高まっているが、安定とはほど遠い。

結果次第ではEUの弱体化につながる可能性も

ヨーロッパは今年11月のアメリカ大統領選でトランプ前大統領が再選される可能性に身構えている。マクロン氏はトランプ氏に対抗して欧州独自防衛体制の確立を主張し、ウクライナ紛争でも強硬路線をとっている。しかし、議会の勢力図が変わり、右派と極右が主導権を握れば、フランスの立場は危うくなり、結果的にEUの弱体化にもつながる可能性がある。

議会が内向きになれば、外交は足踏み状態に陥る。EU政策の大幅な見直しが右派や極右勢力によって要求される可能性もある。加えてフランスはパリ五輪・パラ大会を控え、テロ懸念からいまだに民間警備員の数も訓練も足りていない。

そんな状況下で政府が混乱することは、好ましい状況とは言えない。マクロン氏の賭けは大きなリスクを伴っている。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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