赤字ローカル線は「ガソリン税」で維持すべきだ 「道路財源を回せ」藻谷浩介氏インタビュー

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――では、「税金投入額に比しての、社会的効果の大小」はどのように考えればよいのでしょうか。

一般道路と鉄道を、条件をそろえて比較する必要があります。そのためにも重要なのが、「上下分離」という考え方です。鉄道施設のうち、路盤や架線、信号システムなどは、道路や街灯や信号などとイコールと考え、その維持更新費用は、道路と同じく公共体が負担するというものです。その上で列車の運行はバス同様に民間企業が行います。

存廃の判断については、こうした考え方を元に社会的効用を測定し政策判断がされることになります。しかし可住地人口密度の高い日本の場合、現状は赤字でも上下分離で黒字化する路線は、相当多数存在するのではないでしょうか。過去に廃線になった路線にも、そのような路線は多々あった可能性が高いと考えられます。

藻谷浩介(もたに・こうすけ)⚫︎1964年、山口県生まれ。東京大学法学部卒。日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)などを経て日本総合研究所調査部主席研究員。国内の全市町村、外国の3分の2を自費で訪問し、地域振興に関し研究・著作・講演を行う。著書に『里山資本主義』など。(写真:芸備線魅力創造プロジェクト)

ガソリン税で維持するのが筋だ

――しかし、日本には国費を投じての上下分離の例は存在しません。

北陸のえちぜん鉄道や万葉線など自治体負担による民鉄の鉄道上下分離の実例はいくつも存在しますが、一般道路は、国税であるガソリン税を財源とし、国と都道府県と市町村が分担した公共投資で維持されているのですから、鉄道の路盤も、同じくガソリン税を財源とした公共投資で維持されるのが筋ではないでしょうか。

さらにいえば、道路の総延長と鉄道の総延長では、比較にならないほど後者のほうが短い。しかも鉄道は、路面の面積が小さい。複線で2車線道路、単線なら1車線道路にしか該当せず、道路の路面全体を舗装し直すのに比べれば、保守の手間や費用は軽微で済むのではないでしょうか。ということで、ガソリン税の数%を回すだけでも維持補修は可能と思われます。

――国土交通省道路局はガソリン税を鉄道に回してくれるのでしょうか。

小泉内閣以降、ガソリン税は一部が厚生労働省の福祉財源にも回されてしまっています。これはおかしな話で、この税はまずは、鉄道を含む交通分野に使われるべきです。

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