テスラの"車両分解"で見えた設計の奇想天外 岐阜の廃屋舎が「EVに関する情報発信の聖地」に

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
テスラ車の分解展示
「モデルY オースティン2023」には遮熱のための床がない(記者撮影)

「EVのモーターの熱は70~80度。遮熱はプラスチックでいいのではないかと、果敢にチャレンジした結果、非常に革新的な造り方になった」。瑞浪展示場の施設責任者で、三洋貿易産業資材第二事業部の光部亮人部長がそう解説してくれた。

この設計を可能にしたのは、バッテリーパックの上部に使用している特殊な充填材だ。ピンク色で固く軽い。実はこの素材、宇宙船にも使われている。

テスラCEOのイーロン・マスク氏は、宇宙事業会社のスペースXのCEOでもある。「スペースXの技術を車に応用し、イーロン・マスクの総合力でこの車が実現していると言える」(光部部長)。

三洋貿易の瑞浪展示場
ピンク色の部分がバッテリーパックの上部に使われている充填材(記者撮影)

自動運転をつかさどるECU(電子制御ユニット)も展示されている。半導体チップが整然と並び、見た目にも効率化が進んでいることが伝わってくる。

テスラはECUに実装しているチップを内製している。日本のメーカーでは内製率は3割と言われるが、テスラや中国BYDでは6~7割に達するという。内製には当然リスクも伴うが、新しい技術に迅速に対応できるメリットもある。

「モデルY 2020」に搭載されて話題になった「オクトバルブ」も置かれていた。8つの穴を持つバルブユニットだ。

一般に空調やパワートレイン、電池パックはそれぞれ独立した冷却回路を持つが、オクトバルブの発明で冷却水が流れる経路を変えながら、車両全体で熱を管理することができるようになった。

部品が減り、軽量化、コストダウンが可能になる。結果的に航続距離の延長にもつながる。マスク氏自身も絶賛したという部品だが、「オクト」を意味するタコの図柄もあしらえる。「こうした遊び心に彼らの余裕を感じる」と光部部長はため息をつく。

「宏光MINI」は徹底的なコスト削減

展示された部品一つひとつを見比べていくと、各メーカーの思想の違いが見て取れる。

バッテリーから供給される直流電力を交流電力へ変換する装置のインバーターは熱を発する。テスラでは半導体を冷やすための冷却フィン(突起物)を立てて表面積を大きくし、冷却機能を高めている。

一方、上汽通用五菱汽車(中国)の格安小型EV「宏光MINI」では、空冷方式を採用している。「パソコンのような部品で、これで本当に冷えるのか。おそらくリスクもあると思うが、コストダウンを優先している。こうした発想は日本のメーカーにはない」(光部部長)。

次ページテスラと「宏光MINI」のインバーターにある冷却装置の写真
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事