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EVシフトに直面する中小企業と地方自治体の苦悩 「どうしていいかわからない」と様子見も多い

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EVシフトが叫ばれるようになって久しいが、足元ではその変調があらわになっている。どのように対応すべきか、中小の自動車部品メーカー、地域経済を自動車産業に依存する地方自治体も悩みを抱えている。

さいたま市で開かれた中小企業の受注拡大・販路開拓のためのビジネスマッチングイベント「彩の国ビジネスアリーナ」。主催者に埼玉県や埼玉県産業振興公社が名を連ねる(記者撮影)

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今年1月下旬、さいたま市にある「さいたまスーパーアリーナ」で中小企業の受注拡大・販路開拓のための展示会「彩の国ビジネスアリーナ」が開かれていた。

この場に出展していたのが、完成車メーカー向けにカムシャフトといったエンジン部品のプロトタイプ(試作品)など、小ロット部品を生産する日生工業(埼玉県美里町)。加賀新一常務取締役は「エンジンの新規開発の案件は減り始めている」と語る。

同社はここ数年、新分野に力を入れており、風力発電用軸受の試作品の受注を獲得するなど成果も出てきた。7~8年前までは自動車向けの試作品がほとんどだったが、徐々に顧客のポートフォリオが広がってきた。「多品種少量生産の軸物部品に対する需要はまだまだある」と、手応えを感じている。

自動車以外の仕事をもっと増やすには、これまで接点のなかった顧客に自社の存在を知ってもらう必要がある。そんな狙いでこの展示会に参加したという。

きっかけづくりに展示会を活用

内燃機関(エンジン)向けの切削部品が主力の島野精機(同県滑川町)。内燃機関関連が売上高全体の9割を占める同社も、既存取引の縮小は避けられないと見越し、新規の顧客開拓に力を入れてきた。これまで260社ほどにアプローチして建設機械向け部品を受注するなど一定の成果が出ている。

さらなる顧客開拓を狙って、昨年からこうした展示会に出展するようになった。今回の展示会では「プロトタイプや図面を持ってきてくれた来場者もいた。商談のきっかけができた」と対応してくれた営業マネージャーは語った。

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