EVシフトが急激に進む自動車業界。対応を迫られているのは完成車メーカーだけではない。自動車部品や素材などのメーカーはもとより、設計エンジニアリングなどの技術系企業、販売業者まで変化と無縁ではいられない。 主力事業を失う、技術が通用しなくなるなど、危機であると同時に新しいビジネスが広がるチャンスでもある。自動車ピラミッドはどこに向かうのか――。
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7月上旬、ホンダの購買部門幹部はある案件について関係の深いホンダ系列部品メーカーへの連絡に追われていた。
「八千代工業を売却する」。
7月4日にホンダが発表したニュースは、ホンダ系列だけでなく、自動車業界を驚かせた。
八千代売却の報にホンダ系列激震
八千代は、ホンダが祖業である2輪事業を立ち上げた直後、1950年代から取引を開始した、系列の中でもとりわけホンダと親密な部品メーカーとして知られる。ホンダが50.4%を出資する上場子会社である。その八千代を、ホンダはインドのサンバルダナ・マザーサン・オートモーティブ・システムズグループ(マザーサン)に売却するというのだ。
八千代は売上高の9割がホンダ向け、かつ全体の25%を内燃機関(エンジン)車向けの燃料タンクが占める。世界でEV(電気自動車)シフトが加速する中、ホンダは2040年に脱エンジン車を打ち出している。
新規顧客の開拓や事業構造の転換が急務の八千代が、欧州やインドに基盤を持つマザーサン傘下で成長を目指すーーそのシナリオ自体にさほど意外感はないはずだ。
そうはいっても、親藩ともいえる八千代の売却が、系列各社の動揺を招くと懸念したのだろう。冒頭、購買部門幹部の用件は、八千代売却スキームの説明だったという。ホンダ系部品メーカーの首脳は、「直接説明したいということで連絡を受けたが、それで、われわれにどうしろというのか」と困惑の表情を浮かべる。
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