テスラの"車両分解"で見えた設計の奇想天外 岐阜の廃屋舎が「EVに関する情報発信の聖地」に

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三洋貿易の瑞浪展示場
テスラ車と「宏光MINI」のインバーターにある冷却装置。テスラ車は冷却フィンで表面積を最大化して熱効率をあげている(写真左)。一方の宏光MINIは空冷方式を採用している(記者撮影)

シートの構造を見ても、宏光MINIはかなり簡素化しており、使う部品も徹底的に減らしてコスト削減に挑んでいる。こうした設計思想の違いは、データだけからでは実感として伝わらず、分解して始めてわかるものだ。

三洋貿易は2016年にアメリカのエンジニアリング会社、ケアソフト社の日本総代理店となった。販売しているのはケアソフト社の自動車ベンチマークサービスだ。EVをはじめとした最新車両を分解・解析し、得られた情報をデータベース化してベンチマークデータとして提供している。

自動車関連メーカーは当然、自ら競合商品を分解して研究を深めている。だが、EV化の流れが加速する中では、新興メーカーが次々に立ち上がり、新しい技術や製品が現れては消えていく。

光部部長は、「これだけプレーヤーが多くなってくると、メーカーは自分たちで情報を追い切れない。そこでわれわれのデータベースを活用して競合品の調査ができる」と話す。

展示場には9万点以上の部品が並ぶ

世界中のEV160台分の部品データを集め、高精度の3Dモデルで可視化するケアソフト社のサービスは世界中で200社ほどが利用する。国内でも約40社が利用し、その利用者向けに現物を展示するのが、瑞浪展示場というわけだ。

現在展示場には、世界のEV16台分、9万点以上もの部品が並ぶ。アメリカや中国のEVばかりではない。フォルクスワーゲンの「ID.4」やメルセデス・ベンツの「EQS」、日産の「アリア」なども展示されている。各国、各メーカーの思想の違いが学べる。

展示場を訪れた取引先からは、「最新のテスラモデルを分解展示しているとは思わなかった。発想そのものがパラダイムシフトで、日本にはない思想に愕然とした」(化学品メーカー担当者)、「EVの設計思想はエンジン車とはまったく異なるもの。彼らのモノづくりの考え方をしっかり頭に入れていきたい」(自動車メーカー担当者)といった声が寄せられている。

三洋貿易の産業資材第二事業部の伊藤研一営業グループ主担当は、「部材を実際に見て手に取ることで、データだけでは伝わらない質感や触感もわかる。そこから部材の機能が具体的にイメージできる。百聞は一見に如かずだ」と話す。

世界に後れを取ると言われる日本のEV開発。瑞浪展示場は日系メーカーが世界にキャッチアップしていくための重要な情報拠点といえそうだ。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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