あまりに面倒な「定額減税」、マシな方法はあった 解散総選挙に向けた人気取りの思惑も外れた

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しかし、定率減税の最大の欠点は、低所得者ほど減税額が少なく、高所得者ほど減税額が大きくなることである。所得格差是正には貢献しない。

今から思うと、そうしたことも考慮されて、今般の定額減税が企画されたわけだが、もっといい方法はなかったのか、といいたくなる顛末である。1人当たり4万円の定額減税が実施されれば、手取りの所得が増えて嬉しいという話になるかと思いきや、そうした雰囲気ではないのが実態だろう。

もし「給付付き税額控除」があったなら

もし、わが国に「給付付き税額控除」という仕組みが導入されていれば、定額減税も給付も一貫性を持って実施でき、減税事務や給付事務でこれほど煩わされることはなかっただろう。しかし、わが国の租税法の考え方などから、給付付き税額控除は、一部の政治家や経済学者は唱えるものの、実務的に一顧だにされていない。

2024年の春闘での賃上げ、その直後の定額減税で、好感が持たれ、衆議院の解散・総選挙に打って出られると期待したのだろうか。強いてこの時期に定額減税を実施する決断をした。

しかし、政治資金規正法改正論議が話題を席巻し、多くの人が定額減税のありがたみを感じられない状況である。衆議院の解散・総選挙どころではなくなっている。

こんな大変な思いをしてまで定額減税を実施するなら、二度としてほしくない、という印象を持つ人が多ければ、この定額減税は今年だけで2025年には実施しない、ということになるのだろうか。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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