あまりに面倒な「定額減税」、マシな方法はあった 解散総選挙に向けた人気取りの思惑も外れた

✎ 1〜 ✎ 215 ✎ 216 ✎ 217 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

おまけに、2024年12月までに定額減税のすべてを反映しきれなかった場合、市町村から別途給付をする形で補うこととなっている。

ただし、その際には、公金受取口座を登録していない人は、別途確認手続きが必要となっている。確かに、1人当たり4万円相当の手取り所得の増加にはなるが、給料に減税分が上乗せして支給されるだけかと思いきや、納税額が少ない人はそれだけで済まず別に給付をもらうための確認手続きがいる人がいる。

それなら、いっそのこと全員給付にすればよかったのに、とも思える。

しかし、岸田文雄内閣の判断は、賃金上昇が物価に追いついていない国民の負担を緩和するには、国民の可処分所得を直接的に下支えする所得税・個人住民税の減税が最も望ましいと考えたという。2023年11月に「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を策定したときの判断だった。しかも、衆議院の解散・総選挙をにらんでか、実施を急いだ。

12月ならこれほど手間がかからなかった

6月は、定額減税を実施するのに最適なタイミングだったかというと、所得税制からみて、そうとは言えない。12月の給与に対する年末調整を行うときが、手間を可能な限り少なくできるタイミングである。

もちろん、定額減税を受ける人のすべてが給与所得者ではない。ただ、大半の人は給与所得者である。給与所得者に定額減税を実施するなら、各事業者の手間が比較的かからない12月に実施すればよかった。それを、あえて6月に実施したわけだから、実施を急いだといわざるをえない。

事業者の減税事務をより軽くする方法で減税する方法もあった。それは、定率減税である。

所得税や個人住民税の納税を一定率軽減する形で実施する定率減税は、定額減税のように、減税分を反映しきれずに(税引き後の)給与を支給するということは起こりえない。毎月定率で減税すれば、減税事務は終わる。減税しきれなかった人に給付を出すという必要もない。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事