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「東大理系卒で金融業界」の僕らが小説を書いた訳 田内学×白川尚史「異色の受賞小説家」対談後編

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  • 田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家
  • 白川 尚史 作家、マネックスグループ取締役兼執行役
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白川尚史(しらかわ・なおふみ)/作家、マネックスグループ取締役兼執行役。東京大学在学中に松尾研究室に所属し、機械学習を学ぶ。2012年にAppReSearch(現PKSHA Technology)を設立、代表取締役に就任。2020年に退任し、2022年から現職。著書の『ファラオの密室』(宝島社)が第22回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞(撮影:今井康一)

白川:つまり、人は、その議題の重要性ではなく、自分が詳しいと思えるかどうかで議論に積極的に参加するかを決め、逆によくわからないことは、専門家に任せようとなってしまう傾向があるということです。正しくない意見を言うのが嫌だったり、そのせいで恥ずかしい思いをするのを避けたりするように、意識が働くのでしょうね。

この法則が正しいとすると、「経済ってこうだよね」と経済のことを自分も知っていると思う人が増えれば増えるほど、興味を持って議論に参加する人が増えますよね。だから、田内さんの活動は社会にとってすごく価値のあることだと、お話を伺いながら感じていました。

田内:『きみのお金は誰のため』を書きあげたときには、自分なりに理系の割にはがんばったぞと思ったのですが、似たような経歴をもった白川さんが『このミステリーがすごい!』で大賞をとったという話を知って、心底凄いなと思いました。

白川:別に私は田内さんのような高尚な問題意識を持っていたわけではなく、単に小説が好きで書きたいなというのがスタートでした。自分の場合、実は人生でもっともやりたいと思っていたのが、小説を書くことだったんですよ。

「やらずにいられない」から書いている

田内:ちなみにどんな小説がお好きなんですか?

白川:ハードボイルドが好きですね。もちろんミステリーも好きですけど、ハードボイルドって歴史上、ミステリーに位置づけられることが多いのですね。例えばレイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』とか、日本だと大沢在昌さんの『新宿鮫』などが有名です。

ハードボイルドって、基本、主人公が報われないことをやったりするのです。自分自身の生きざまを通すために、利得とかを全然考えることなく、合理的な経済人とはかけ離れたことをしたりする。そういうのを、すごく格好よく感じるのです。

白川氏の著書『ファラオの密室 』(宝島社)。書影をクリックするとアマゾンにジャンプします。

自分がどうありたいかが大事で、数字で測るみたいなことはしない。別の人ならまったく違うことをするかもしれないけれど、でも自分は自分だからこうするみたいなスタンスがすごく大事だと、ハードボイルドを読むと感じるのです。

本を1冊書くのって大変じゃないですか。小説1本書くだけで、数百時間かかるし。そんなに大変なことだから、本を書くことって、やる必要がなければやらないことだと思うんですよ。

じゃあ、なんでやるのか問われたら、答えは「やらずにはいられないくらいやりたいことだから」以外はないと自分は思っています。

一方、私はマネックスグループの取締役兼執行役も務めていますが、会社の経営に携わるのって、株主に選ばれてなるものであって、やりたいからやるという論理が通る世界じゃないじゃないですか。

取締役に選んでいただいたなら、その責務を果たすのは当然です。その責務を果たしつつも、これからも小説は書いていきたいと思っています。

前編:若者に教えたい「資産形成より大事な金融の本質」

(構成:小関敦之)

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