アップルが対外的に大きく訴求せずに、こうした開発を行ってきたのは、彼らの主力製品が半導体やWindowsのようなOSではなく、エンドユーザーが購入する端末、ハードウェアであるからだ。
ハードウェアの開発・販売がコアの事業ではないマイクロソフトは、最終製品の機能や性能を見据えて全体の設計を行うことはできない。アップルが垂直統合型で自社製品内において進めてきた技術を、水平分業で展開したのがマイクロソフトの手法だと言い換えてもいいだろう。
つまりマイクロソフトは、Copilot+ PCで1つの枠組みを作り、AI機能を開発するためのインターフェースと、その性能のボトムラインを定義することで、ルールチェンジを行おうとしているのだ。
AIの主役はあくまでもソフトウェアだ。AI技術を開発する企業であるマイクロソフトが、デバイス内で動作する価値あるAI機能を実現するための枠組みとして、半導体チップに求めるスキームを定義したことは一つの楔になるだろう。
アップルは「答え」を用意できているか
一方で、その裏返しもまた事実だ。
端末に慣れ親しんだエンドユーザーの目線を取り入れて、一貫したユーザーインターフェースや機能の提案を行えるのは、すべてのカギとなる要素を自社で開発しているアップルだけだ。
あくまでも一般論だが、未成熟な技術が勃興する時代においては、多様な企業がそれぞれに進化軸を探し求めることができる水平分業のプラットフォームが伸びる。単純に市場規模が大きく、多様な企業の参画によって投資規模も大きくなるからだ。
しかし現在のアップルの企業規模、洗練された垂直統合モデルを持ってすれば、過去のパソコン時代とは異なる展開に持ち込めるかもしれない。
6月10日から、アップルの開発者向け会議「WWDC 2024」が始まる。そこではAIに関するさまざまな取り組みが発表されると見込まれる。
マイクロソフトが仕掛けようとしているゲームチェンジに対し、アップルはどのような答えを用意しているのか。あるいは答えを用意することができなかったのか。イノベーションにより、挑戦者から支配者となっていたアップルが新たなるイノベーションにどう対処するのか、注目される。
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