マイクロソフト「新型PC」にアップルの反撃あるか アップル先行のAI技術領域で勢力図変わる?

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NPUとは、AIの推論処理を効率的に行うため、従来重視されてきたCPUやGPUといった演算ユニットとは別に設計された処理回路のこと。比較的単純な機械学習処理に使われることが多かったが、Copilot+ PCでは、NPUの処理性能に毎秒40兆回というボトムラインを設けた。ちなみに先日アップルが大々的に発表した「iPad Pro」に搭載される最新チップM4のNPU(Neural Engine)は、毎秒38兆回の演算能力を持つ。

従来の業界水準からすればかなり高いライン設定だが、この数字はおそらく、プロセッサーを提供する事業者側と、NPUの性能強化について検討・調整を重ねて導き出したものだろう。

実際、例えばインテルやAMDが現在提供しているいわゆるx86プロセッサーの搭載NPUは、Copilot+ PCが求めるボトムラインを下回る。しかし6月頭に開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2024でAMDは、毎秒50兆回の処理性能を持つNPUを搭載した「Ryzen AI 300」を発表。近くインテルも同様の発表を行う可能性が高い。

さらにマイクロソフトは、Copilot+ PC対応のWindows 11向けに、SLM(Small Language Model:小規模言語モデル)と名付けたPC内で完結できる言語モデルを開発した。

前述したように生成AIの多くは、言語モデルを中心に派生、合流して、さまざまな機能を生み出している。マイクロソフトの狙いは、Copilot+ PCの要件を定義することで、SLMとともに動くAI機能の開発を促し、Windowsを「AI内蔵パソコン」のデファクトスタンダード(事実上の標準仕様)にすること。そして、クラウドで展開するLLMを活用したCopilotのサービスとシームレスに連携することにあるのだろう。

より高性能化へエヌビディアとも連携

こうした標準となる仕様作りに加えて、マイクロソフトは、より高性能なシステムの構築に対応させる布石も打っている。

アップルを時価総額で抜いたことで話題になっているエヌビディアは6月2日、マイクロソフトと共同でWindowsのAI機能を加速させるソリューションを開発すると発表した。

エヌビディアのGPU「GeForce RTX」は、"Tensor Core"と呼ぶAI処理にも利用できる処理エンジンを搭載している。GPU内部に配置されているため、一般的なプログラムから直接呼び出すことはできないが、一般的なプロセッサーでは効率的な処理が難しい推論時の計算を、NPUと同様に効率よく行える。

そこでエヌビディアは、Windows Copilot Runtime(AIの推論処理を行う際に呼び出すモジュールのこと。このモジュールを通じてNPUが処理を行う)を通じ、Tensor Coreによって、Windowsで動作するAI機能、アプリケーションのパフォーマンスを加速させる仕組みを提供する。

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