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「世界初の手術」成功した医師のシンプルな原動力 「名医ほど大きく切る」は患者のためにならない

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  • 渡邊 剛 心臓外科医、ニューハート・ワタナベ国際病院総長
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手術は、医師の固定観念にとらわれて行われるべきものではありません。患者さんの病気を治す、病状を改善させる、さらには術後の回復を早めることが大前提です。

ならば、切るのは最小限にとどめる必要があるのではないかと。

大きく切れば、手術はしやすい。でも、それでは患者さんの術後の回復が遅れる。小さく切るなかで的確な手術を行うことこそが、外科医に求められることだと思いました。

医療現場で患者さんたちに接していると、さまざまなことがあります。思わぬ事態で、心が痛くなったこともありました。

まだ私が医者になって間もないころのことです。胸骨正中切開(胸の真ん中で喉元からみぞおちまで、20~30センチ程度の皮膚を切開し、すぐ下の胸骨と呼ばれる骨を縦に切る)で、たった1本の冠動脈バイパス手術を受けた患者さんの回復が遅れたのです。

入院期間が長くなり、職場復帰までに時間がかかりすぎたため、その患者さんは会社から解雇を言い渡されてしまいました。理不尽なことだと感じると同時に、私にとって考えさせられる出来事でもあったのです。

「当たり前」と向き合うことで見えてくるもの

私は、冠動脈バイパス手術における小切開(胸の骨を全く切らず、肋骨の間から行う)のやり方を模索し、さまざまな方法を開発しました。以前なら正中切開をしていたのを、わずか6〜7センチ程度の切開での手術を可能にしたのです。

こうした技術を習得すると、それが当たり前になります。「これまでの大きく切るやり方は楽で簡単だったな」と思えます。

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【患者には大きな負担をかけていた】

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