阪急が参画表明、日本と「マニラ都市鉄道」の40年 「オールジャパン」の限界露呈した建設の歴史

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LRT1号線以外のマニラの都市鉄道整備についても振り返ってみたい。

東南アジアで初の都市鉄道であるLRT1号線に続き、MRT3号線、LRT2号線と開業していったが、その整備スピードは遅く、バンコクやクアラルンプールといった周辺都市に大きく水を空けられることになった。しかも、2号線を除いて車両が小型であることから輸送力が不足しており、禍根を残している。

マニラの都市鉄道整備については、1970年代に海外技術協力事業団(現JICA)が先行して調査を進めており、普通鉄道規格の地下鉄を提案していた。しかし、世界銀行の調査でコストの低い軽量輸送システムで十分として決定づけられ、日本側の提案が退けられたとされる。東南アジアの伸びしろをヨーロッパ諸国が予測できていなかったといえる。

また、フィリピン特有の事情としてさまざまな不正が取り沙汰され、着工そのものの遅れや運行への支障が起きたほか、有力政治家と財閥、また商社が癒着し、プロジェクトが私物化されてきた過去もある。結果、各線共に開業後のオペレーションに問題を抱え、車両整備や保線の不良からトラブルが絶えず、そのつど予算を割いてリハビリ事業を実施する事態となった。その大部分が円借款で賄われているというのも特筆すべき点だろう。

トラブル多発、円借款の改修事業で乗り切る

1999年に開業したMRT3号線は、MRTを名乗っているものの1号線と同じLRT規格である。これはPPPスキームで建設され、民間のメトロレイルトランジットコーポレーション(Metro Rail Transit Corporation、MRTC)が建設主体となり施設を保有、運輸省がBLT(建設・リース・譲渡)契約に基づきリース料を支払いながら運行を行っている。

マニラMRT2号線
LRT2号線の高架橋の下をくぐるMRT3号線。車両は1号線と同じLRT規格の小型車両だ(筆者撮影)

同線は建設にあたり、住友商事が三菱重工と組み、駅や軌道、信号、車両基地などの地上側の土木工事一式及びまたメンテナンス業務を受注した。他方、車両はチェコのタトラ社が納入した。これは、土木部分は日本輸出入銀行(当時)の、車両部分はチェコ輸銀の輸出信用にて賄われていたからである。

東南アジアの環境を考慮していないタトラの車両は当初、トラブルが相次いだが、メンテナンスを請け負っていた住友商事及び三菱重工側で対応したとみられ、今でも車内には三菱のロゴが掲出されている。

マニラMRT2号線 タトラ製車両
タトラ製のMRT3号線車両。一時は稼働率が大きく低下したが現在はほとんどの車両が営業に就ける状態に持ち直した(筆者撮影)
マニラMRT3号線 三菱ロゴ
MRT3号線のタトラ製車両内にある三菱重工のロゴ(筆者撮影)

しかし、2012年に運輸省が住友商事とのメンテナンス契約延長を認めなかったことで事態は深刻化した。委託先をフィリピンのローカル企業や韓国企業と次々に変更したが、満足なメンテナンスができないどころか、レールを含むメンテナンスパーツが調達できず、大規模な輸送障害が頻発した。

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