開発見直しで220億円特損、スクエニが抱える苦悩 収益悪化を受けゲームの開発方針を大幅転換へ

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FF16やFF7リバースはソニーの「プレイステーション5」のみで発売するなど、スクエニでは主力タイトルの一部を特定のハード端末での展開に限定していた。

一方、業界では1つのハードに依存せず、任天堂のスイッチやマイクロソフトのXbox、PCなどを含む複数のプラットフォームに同時展開するケースが増えている。ユーザー層や地域を広げることで、ゲーム自体の世界的ヒットだけでなく、IPの影響力拡大も狙うことができる。

「FFシリーズは映像美を押し出しているからこそ、ハイエンド向けのプレイステーションが選ばれていたが、今は海外で普及率の高いPCなどのスペックも上がってきている」(業界関係者)

スクエニによると、「開発を継続するタイトルや新たに立ち上げるタイトルは、基本的にほぼすべてマルチプラットフォームで展開していく」という。

横連携を重視した組織体制に変更

スペックの異なる複数のプラットフォームで同じように動かせる仕様を作り上げるには、そのためのノウハウが必要とされ、開発は複雑化、高度化する。この先スクエニでは、開発プロセスの見直しや合理化に加え、マルチプラットフォーム対応という条件下でのクオリティの維持・向上が求められる。

内部開発の強化に向けて、4月には組織体制も変更した。「組織が縦割りで、情報の横連携ができていなかった」(スクエニ)として、これまでの事業部制を廃止し、開発人材の有効活用やノウハウの共有を進める方針だ。タイトルポートフォリオの管理が行き届かず、自社が手がける複数のタイトルが同時期に発売されたことで需要を食い合ってしまう状況も発生していたといい、タイトルの進捗管理プロセス全体も見直す。

「ある程度の規模のHDゲームを開発するには5年はかかる」(業界関係者)とされ、今回の改革の成果が発売タイトルの中身や業績に反映されるには、相応の時間を要するだろう。

一方で、ゲーム市場を取り巻く環境の変化はめまぐるしい。移ろいやすいユーザーの嗜好を的確にキャッチしながら、安定的に収益を生み出し続ける体質に変革できるか。重要な局面を迎えている。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ゲーム・玩具、コンテンツ、コンサル業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、医療機器、食品など。趣味は東洋武術。

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