成田空港の滑走路そば「東峰神社」予想外の現在 機動隊員3名が殺害された「三里塚闘争」は今…

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ひょっとしたらマクドナルドくらいはやってるかと思ったがしっかりと閉まっていた。晩飯は空港で食べようと思っていたので、少しガッカリだった。

営業していたのはセブンイレブンだけ。とりあえず飯は食えるが、ちょっと味気ない。アナウンスが流れる。

「空港内で宿泊されるお客様は、地下1階、1階、2階のいずれかでお過ごしください」

つまり3〜4階はいられないということだ。実際、機器の修理や工事が始まって居づらい雰囲気になって来たので立ち去る。

しかし空港としては「空港内で夜を明かすこと」自体は良しとしているのだな……と良い発見をした。

僕はホームレスを長年取材してきたが、夜明かしを許している施設は本当に少ない。実に心の広い施設である。

空港内にはたくさんの椅子が置かれている。椅子も公園の椅子のように手すりがあって眠れないような意地悪な構造ではない。むしろ、尻の形状に曲がっておらずフラットだ。 座る時は少々ケツが痛いが、とても寝やすい椅子だ。もちろん館内の温度もちょうどよい。

うろついていると、外国人の人たちがやたらとたくさんいる場所があった。ホテルを取らず空港で泊まることを決め込んでいる人たちがいるのだろうか?

コンセントつきのテーブルが何台かあって、ちょうどタブレットで仕事をするつもりだったので是非席取りしたかったが、すでに全部埋まっていた。若者たちが楽しげに語らっている。初心者には場所取りが難しいのも、公園でのホームレス生活と同じだ。

しかし、どの椅子ゾーンにもたいていいくつかUSBのコンセントが用意されている。

どこに座ろうかなと思いつつ、何気なく上を見上げると、オレンジ色の光が灯っていた。
 
「おお、吉野家だ!!」

さすが吉野家、24時間営業だった。

さっそく足を運んでみる。吉野家独特のコの字型のカウンターではなく、テーブルが並ぶ一般的なレストランの形だった。そして値段が少しだけ(50円ほど)高かった。

まあ空港だから、映画館や富士山の上で食べるようなものか……と無理やり自分を納得させて、牛丼大盛りと卵を頼む。やっぱりアツアツの物を食べられるのは嬉しい。

食べ終わった後は、2階で席取りをする。まあまあ混んでいたのに、女性ひとりしかいないエリアを見つけて座った。

席からギリギリコンセントに届いたので、iPadでポチポチと請求書を書いたりしていた。
 
「すいません〜! 掃除しますんで。ワックスかけますので2時間後には座れます」

と作業服を着たお兄さんに言われる。

なるほど、掃除で立たされることが分かっているから、人が少なかったのか。成田ビギナーではそこまでは分からなかった。

みんな躊躇せず横たわり、寝息を立てはじめる

幸い他のゾーンで似たような席に座ることができたので充電しながら、仕事を続けた。他の席には若い男性やカップル、外国人客などがやってきては、横になった。みんな躊躇せず横たわり、グーグーと寝息を立てはじめる。うら若き女性も寝ている。

食べ物や飲み物を持っている人など堂に入っている人が多い。どうやら成田泊まり経験者が多数いるようだ。

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周りはみんな眠りについたが、成田国際空港自体は眠りにつかない。

掃除や工事がそこらじゅうで行われている。しかし深夜3時過ぎに、館内の電気が消えた。薄暗い中、グーグー、スースーと寝息だけが響く。

「おお、寝てる人のために電気消してくれるとは、なんと優しい」

昔々、雑誌の企画で24時間営業のマクドナルドで1カ月生活できるか?   という馬鹿企画をやったことがあるのだが、多くのマクドナルド店舗ではウツラウツラしかかると、

「大丈夫ですか?   寝ないでくださいね」と店員が起こしにきた。

なかなか眠れるマクドナルドはなかったのだが、そんな中渋谷のマクドナルドだけは、深夜は電気を消して眠りやすくしてくれた。東京ドリフターズに対して、渋谷のマックなみに優しい成田国際空港。

ありがとう成田国際空港……と思っていたのもつかの間、成田国際空港の夜は短かった。30分後には明かりがついた。

電気がついても、しばらくはみんなグーグーと寝ていた。僕は、iPadで漫画を描いているうちに、朝になった。

成田国際空港の安定したWi-Fiのおかげで原稿も無事に送信することができて、無事韓国に旅立ったのであった。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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