共働き夫婦をトコトン悩ます「37.5℃の壁」

親にだけ子育てを押しつける社会は健全か

——37.5℃に影響を受けるのは、母親が多い?

本当は夫婦2人で働いて、2人で育てているのだから、父親も関係あるはずです。しかしながら、悩むのも影響を受けるのもだいたいは、母親です。「子育てはお前に任せたから」と言う、わかっていない夫が多いからです。

妻は「任せたからじゃねぇよ、この状況をどうすんだよ」と思いつつも反論できずに、ただ追い詰められる。自分の方が稼いでいないから、となぜかひいてしまう。そして、「母親なんだから、母性があるでしょ」的な外圧を受けたり、ある種、外圧を内面化してしまったりする部分もあります。

その根底には、「熱の時は親が子供を見るべきだ」という、一見親切そうな、しかし、大変迷惑な『べき論』があります。

これを言うのは、自分の母親、夫の親、保育園などです。母親としては、育児の先輩や保育園から言われると、「やっぱり私が見なくちゃ…」となってしまいます。でも、それは完璧に間違い。“共働き時代”なんだから、“共育て”するべきなのです。

子供は、健康な時も子供。熱を出している時も子供。コインの裏表に過ぎないのだから、どんな時も2人で一緒に育てるものです。日本の有史以来、戦後の一時期を除いて、子育てを親だけでやっていた時代はほとんどありません。

子育ては共同体でやるもので、おじいちゃんやおばあちゃん、近所のおじさん、おばさん、兄弟などが面倒を見るのが一般的でした。だから、病児保育も共同体でやってきたはずなのです。しかし、いつの間にか、母親が仕事をせずに子育てをするのが当たり前、ということになってしまった。たかだか数十年の、専業主婦がマジョリティだった一時期に形成された価値観をひきずっているのです。

病児保育のインフラを本気でつくってこなかった

——そういった間違った価値観以外に、この問題が深刻化している原因はどこにあるのでしょうか?

政府が世の価値観に甘えて、病児保育のインフラを本気で作ってこなかった、ということです。保育園が病気の子供を預かれないのは仕方がないこと。だったら、他に預かれる仕組みを作ればいいだけの話です。そこで、病児保育の施設が作られる場合に補助が出るようになったのですが、それが非常に少額で、満足に運営出来ないほどでした。全体予算もなく、とても随弱な政策しか打たなかったのです。

かつ、その政策も本気で考えられていなかった。病児保育が出来るのは小児科だけ、という縛りもあったので、小児科の数自体が少ない今、その数しか病児保育施設の数が増やせないのであれば、結局無理じゃないですか。

ニーズから逆算もせず、現場を知らない人たちが、いい加減にとりあえず作っていて、政策の優先順位も低く、雑でした。だから、私たちも訪問型病児保育というモデルを作らざるを得なかったのです。後は、「そもそも親が休める社会を作らないと」などと言う、『そもそも論者』という敵もいます。

これは一見正論ですが、違います。これは親のみに子育てを押し付ける論だし、それが出来ないまま何十年も経っているから、困っている人を助ける社会インフラを作って整えようとしているのに、休める社会を作る、とか働き方を変える、とか言いだすと政策の方向性がずれていくのです。両方大事だけど、本来は困っている人を助けながら、社会構造を変えていくべきで、何十年後かに働き方の改善が出来ればいいのです。

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