しかし、今回の取締役会の対応によって、テスラに対する訴訟はさらに増える可能性がある。テスラは規制当局や顧客、さらに同社の運転支援システムの欠陥で被害を受けたと主張する人々からの法的圧力にさらされている。
その一方で「従業員1割解雇」の露骨
「世界で最もリッチな人物の1人」というマスクの地位を回復する今回の行動に出る2日前、テスラは従業員の10%、つまり約1万4000人を解雇すると従業員に伝えた。
「当然、見栄えはよくない」と、コーポレート・ガバナンス(企業統治)を研究するジョージタウン大学マクドノー・スクール・オブ・ビジネスの准教授ジェイソン・シュレッツァーは言う。
マスクは右派陰謀論の支持で潜在的な顧客の多くを遠ざけているが、取締役会が監視を強めようとしている兆候はない。反対に6月の株主総会に向けて17日に提出された文書は、取締役会としてマスクを断固支持するというシグナルを発するものだった。
取締役会は株主に対し、テスラの法人登記をデラウェア州からテキサス州に移転することで承認を求めたが、この変更は今年1月、デラウェア州の裁判所に報酬パッケージを無効化されたその日にマスクが要求したものだ。
さらに取締役会は、マスクと一緒に休暇を過ごす仲にあるメディア界の重鎮ジェームズ・マードック、そして弟のキンバル・マスクという、マスクと親密な間柄にある2人の取締役を再任するよう求めた。
テスラの今回の行動は、2018年に導入されたイーロン・マスクの報酬プランを無効にした、デラウェア州衡平法裁判所の判事キャサリン・セントジュード・マコーミックを事実上非難するものだ。判事は判決の中で、マスクに対する監督が緩い、と取締役会に苦言を呈していた。