成長へ舵切るブラザー、試される“新事業創出力” 新しい5カ年計画を始動

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新事業に挑戦するブラザーのDNA

10年、20年というスパンでブラザーが継続的に成長をしていくために、産業機器や通信カラオケ以上に重要なのが、「新規事業」だ。

中計では、ネットワークイメージングデバイス(NID)などの新規事業で5年後に500億円の売り上げを目指す。「具体的なものがあるわけではなく、絶対にやるぞ、という意気込み。新規事業なくしてブラザーの未来はないと思っている」(小池社長)。1500億円の戦略投資枠を設定し、M&Aを積極的に行っていく計画だ。

ブラザーのDNAには、果敢に新規事業へチャレンジしてきた歴史が刻まれている。前身の安井ミシン商会が創業した1908年から戦後に至るまではミシン専業だったが、50年代に入るとオートバイエンジン、工作機械、編み機、欧文タイプライターなどへ展開。さらには洗濯機、電子レンジなどの家電製品や電子楽器、電卓などにも手を広げた。

その中で大きく花開いたのが、欧米市場向けの事務機。タイプライターを起点に、プリンタやファクシミリなどの情報機器が収益柱に成長した。新製品・新事業を生み出すブラザーのDNAは、90年代の通信カラオケや米国向けの低価格複合機でも証明されたが、最近はそうした成功事例が生まれていない。

数年前、ブラザーの筆頭株主は、あのスティール・パートナーズだった。08年11月、スティールは、カラオケや不動産など非中核事業の売却、保有現預金による自己株消却のほか、スティールのノウハウを活用したオフィス機器事業の採算向上を提案する書簡を送っている。

当然、小池社長はこの提案をはねつけた。そして、いっそうの多角化推進と、余剰資金をM&Aなどに投入する道を選んだ。この選択の正しさを証明できるかどうか。これから数年、「ブラザーのDNA」の真価が試されることになる。

(週刊東洋経済2011年8月6日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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