中部電力「やらせ発言依頼」は、浜岡原発の水谷所長がはねつけた
7月29日、中部電力は名古屋証券取引所で第1四半期の決算説明、および定例記者会見を開催した。浜岡原発停止の影響により、通期営業利益は1700億円の営業赤字になる見通しだと発表。1951年の会社設立以来初の営業赤字転落だ。
会見では、同じ浜岡原発関連で、2007年8月に静岡県御前崎市で開かれた国主催の「プルサーマルシンポジウム」についての質問も相次いだ。九電で発生した「やらせ発言依頼問題」を受け、経済産業省は国が主催したシンポジウム等で特定の意見表明を要請した事実があるかどうか社内調査を行うように電力会社に指示。その回答期限が29日だった。
中電は、午前中に調査結果を発表し、社員や関係会社社員に対し出席を促す依頼をしていた事実があったものの、原子力安全・保安院から「地元住民に賛成か中立の立場での質問を要請するように」との働きかけは断った、という調査結果を公表したばかり。
依頼を断った理由について、水野明久社長は「02年以来、当社はコンプライアンスの強化を推進してきた。そうしたこともあり、意見表明まで要請するのは明らかに行き過ぎだ、との判断が担当者レベルでも働いた」と説明した。
出席者の動員を行ったことについては「当時、そのことで賛成への誘導をする意識があったわけではないが、いま振り返ればそう誤解を受けるような行為だったと思う。申し訳ないことをしたと考えている」と謝罪した。
現場が“良心の砦”に
原子力安全・保安院からの「やらせ依頼」をはねつける判断をした現場のキーパーソンは誰なのかといえば、浜岡原子力発電所のトップである水谷良亮総合事務所長だ。
会見後、法務部の担当者は「地元の信頼が第一である、という考えは、水谷所長の強固な信念。コンプライアンス担当の法務部に相談があったという記録はなく、当該問題の最高責任者である水谷所長が、自らの判断で、正しい判断をした、というのが実際のところだ」と明かした。
本店の原子力部門の社員は、一度は地元住民に依頼する発言の文案を作成していたという。そうした動きはあったものの、現場のトップである水谷所長が、最高責任者としてコンプライアンスに従ってしかるべき処理したということのようだ。
(山田 俊浩 =東洋経済オンライン)
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