米国の人種差別は「旗」を下ろしても消えない 「白人家庭は黒人家庭より7倍裕福」という事実

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ロサンゼルス南部では去年警察が、非武装の25歳黒人男性イゼル・フォードを射殺し、ロイターの取材を受けた住人は、南北戦争時代の南部連合旗が公的な場所からついになくなるという動きは歓迎するが、この除去がアメリカの人種にとって重大な分岐点になるとは思っていないと話した。

「黒人は依然として殺されるでしょう。彼らはまだ無教育なのです。医療の恩恵にもほとんどあずかっていません」と、フォード殺害に対する地域対応の組織化を支援する弁護士メリナ・アブダラは言う。南部連合旗が下ろされても、黒人を殺害する組織的な人種差別や警察のシステムの解決にはならない、と彼女は語る。

白人家庭は黒人家庭より7倍裕福

一連の統計はこういった懸念を明確に示している。ワシントンの公共政策シンクタンク、アーバン・インスティテュートによると、2013年、平均的な白人家庭は平均的な黒人家庭より7倍裕福であった。黒人の失業率は白人の失業率より、1970年代初期以降変わらず2倍多いことが政府のデータにも示されている。さらに黒人の27%以上が貧困ライン以下の生活をしているが、白人では13%である。

アブダラ、ホワイト両者が認識しているのは、アフリカ系アメリカ人が直面する南部連合旗より困難な問題である。それは黒人男性は投獄される確率が6倍多い司法制度や、多くの地域で銃による犯罪率が高いことなどである。疾病対策センターによると、アメリカでは黒人は白人より銃の犠牲になることが2倍以上多い。

「我々はこの旗を巡る議論でさらに大きな困難を人々から見えなくするわけにはいきません」とアブダラは言う。

それでも多くのアフリカ系アメリカ人にとって、南部連合国旗を降ろすという運動は力強い象徴的な意義を持っていて、21歳のディラン・ルーフが6月17日のチャールストン銃撃事件で起訴された後はとりわけそうである。ルーフの逮捕後数日で容疑者がこの旗を持ってポーズしている写真が広まった。

「旗というシンボルは様々な人種の人にとって痛ましいのです。もし有色人種でなければ理解できないかもしれません」と、アラバマ州バーミンガムで育った51歳のジェリ・ハスレムは話す。彼は、南部連合旗のTシャツを着た男の子から人種的中傷を受けた幼少期を、今でも覚えている。

旗擁護派は旗が南部の誇りであり、1861年から1865年のアメリカ南北戦争で殺された何万もの南軍兵士への賛辞であると言う。しかし多くのアメリカ人は黒人であれ白人であれ、この旗を黒人奴隷制度を存続するために11の南部連合国が合衆国を離脱したという歴史を思い出させるものとして見ている。

旗は、南北戦争が始まった地であるサウスカロライナの州議会議事堂内にはまだ翻っているが、保守党の州知事や他の議員たちは今では取り外してほしいと思っている。

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