【スクープ】パナソニックが「家電PB」受託に参入 手薄の低価格白物家電で中国メーカーに対抗

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ライバルは国内勢にとどまず、中国系を中心に進出が相次いでいる。2011年に中国ハイアールが旧三洋電機の家電事業を買収したことを皮切りに、2016年にはシャープが台湾の鴻海傘下に入った。同じ2016年には東芝も白物家電事業を中国の美的集団に売却。日立も現在、外資含むパートナー先を探している。

家電製品の製造では、数量が増えるほどコスト競争力が高まる規模の経済が働く。中国系メーカーに市場が席巻される前に、パナソニックは先手を打って国内の低価格帯市場を取り込むことで、事業規模を高める狙いがある。

2つ目の施策は、中国で得たノウハウの活用だ。低価格帯向けの製品では、中国向けに展開しているモデルの国内流用も検討する。国内市場以上に競争環境が厳しい中国で磨いてきたモデルで、価格競争力を高める。

また、パナソニックブランドの製品では、余分な機能を廃し、パナソニック独自の先進機能に絞り込んでいくことで製造コストを下げる。中国系のメーカーが値下げをしてきた場合には、指定価格制度の対象製品でも機動的な値下げを行えるようなコスト体質にするのが目的だ。

中国勢が日本市場を虎視眈々と狙う

欧米や東南アジアで高いシェアを誇る、韓国のサムスン電子やLGエレクトロニクスは日本で本格展開はしていないが、中国メーカーとの競争は今後5年間で過熱する可能性が高い。

美的集団は今年2月に都内でイベントを開催し、タレントの谷まりあ氏を起用したマーケティング戦略で、冷蔵庫や洗濯機など白物家電を本格展開すると発表した。

日本ではスマートフォンの販売が中心の中国シャオミも、日本国内での家電展開に意欲を示している。昨年9月に開いたイベントで、日本法人の社長に就任した大沼彰氏は「家電の展開も考えていきたい」と意気込みを語った。大沼氏はパナソニックモバイルコミュニケーションズ出身で、サムスン電子ジャパンやHTC NIPPONなどを渡り歩いてきた人物だ。

さらにパナソニックは新たな施策も打ち出す。4月10日に都内で開いたメディア向けイベントで、初期不良品やサブスク利用から戻ってきた製品を清掃・点検して販売する新たな取り組みを発表した。

冷蔵庫や洗濯機、テレビなどの大物家電から、ヘアドライヤーなどの小物家電まで再生品のラインナップは幅広い(記者撮影)

この取り組みでは新販売スキームで売れ残った製品なども含め、指定価格の約2割引で家電製品を直販する。余剰在庫の受け皿としての狙いもあるが、一連の取り組みで最終的に目指すのはエコシステムの構築だ。

小売店との連携をどう深めるか

再生品の販売では、経済産業省が掲げる「成長志向型の資源自律経済戦略」を意識した。「今後も国内の家電市場を持続可能にするためには、政府や自治体との連携が不可欠」(宮地氏)との考えだ。

これからPBを本格展開するとなれば、小売店との連携もさらに緊密にしていく必要がある。とはいえ仲間作りはまだこれからの段階。国内トップとして、名と実の両方を守るべく腹をくくったパナソニック。家電でブチ上げた全方位戦略が、動き出そうとしている。

梅垣 勇人 東洋経済 記者

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うめがき はやと / Hayato Umegaki

証券業界を担当後、2023年4月から電機業界担当に。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。

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