しかし、現在の日本では収益性ばかりに注目が集まり、その結果としてNISAやiDeCoがもてはやされている。
当然ながら、投資商品で運用する限りはリスクが生じる。そこで、一気に大きな資金を投資するより、少額で時間をかけて積み立てすれば価格変動リスクも平準化されますよ、と疑似的な“安全っぽさ”がアピールされている。
また、投資によって将来どれだけ資産が増えるかは誰にも断言できないので、過去のシミュレーションをもとに「預金に預けているよりは増えるでしょう」と、ぼやっとした言い方がされることになる。
話を戻そう。つまり預金には「増える」ことは期待されていない。となると、「短い期間で使うためのお金」の置き所として利用するのがいい。減っては困るような、使う時期がはっきりしているお金を置いておくのにちょうどいいのだ。
まずは普通預金から。用途は言うまでもなく生活費だ。流動性がとびきり高く、いつでも引き出せる。その代わり金利は高くない。なぜなら金利とは不便さと比例しながら上がっていくからだ。10年ものの定期預金は、利用者が10年引き出せない不自由と引き換えに金利が高くなっている。つまり、普通預金は貯める目的には一番そぐわない。
それに、いつでも引き出せる普通預金は、どうせどんどん減っていくのだから金利が高かろうが低かろうが関係ないのだ。年0.001%でも0.02%でも、給料日前にはほとんど残高が残っていない人なら意味がないからだ。だから、「普通預金でも高金利!」という文言に惹かれて、あちこち口座を開くのは管理が大変になるだけだ。「普通預金の金利を引き上げます」といわれても聞き流していい。
頻繁に起きる元本割れの恐怖
それよりも気を付けたほうがいいのは、事実上の元本割れを防ぐこと。安全性が高いはずの預金なのに、気を付けないと簡単に元本割れを起こしてしまう。言わずもがなの「引き出し手数料」だ。
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