アップルやアマゾンでも「失敗する」共通の特徴 プロジェクト自体は最終目的ではなく達成する手段

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とはいえ、どんなプロセスも完全無欠ではない。あるときジェフ・ベゾスは、「ジェスチャー操作に対応する3D機能搭載のスマートフォン」というアイデアを思いつき、これに惚れ込んだ。そしてみずからPR/FAQを共同執筆して、「アマゾン・ファイアフォン」のプロジェクトを立ち上げた。

「クールなアイデア」は無料でもいらない

当時アマゾンでデジタルメディア担当副社長を務めていたビル・カーは、2012年にファイアフォンのことを初めて知ったとき、「スマホにバッテリー消費量の多い3D対応画面をほしがる人なんているのだろうか」と疑問に思ったという。

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それでも、1000人以上の社員を巻き込んで開発が進められた。ファイアフォンは2014年6月に約200ドルで発売されたが、売れ行きはかんばしくなかった。やがて半額に値引きされ、ついには無料になったが、それでも誰もほしがらなかった。

1年後、アマゾンはファイアフォンの販売を終了し、数億ドルの損失を計上した。「ファイアフォンの開発者が指摘していた通りの理由で失敗した。それがばかばかしくてね」とあるソフトウェア・エンジニアは言う。

「なぜ?」という問いかけが意味を持つのは、全員が気兼ねなく発言でき、意思決定者が聞く耳を持っているときだけだ。「多くの関係者が、ファイアフォンはうまくいくはずがないと思っていた」と、ジャーナリストでアマゾンに関する本を数冊書いているブラッド・ストーンは結論づける。「だが頑固なリーダーに議論を挑み、打ち負かすだけの気概や賢さを持つ者は1人もいなかったようだ」

右から左へ考えることが難しいのは、それが自然なことではないからだ。私たちにとって自然なのは、「見たものがすべて」と考え、目の前にあるものだけに集中することである。そして、クールなアイデアに惚れ込んでいるときや、プロジェクトの設計にのめり込んでいるとき、細部に没頭しているときはなおさら、右端のボックスは目に入らない。トラブルが始まるのはここからだ。

ベント・フリウビヤ オックスフォード大学第一BT教授・学科長

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Bent Flyvbjerg

オックスフォード大学第一BT教授・学科長、コペンハーゲンIT大学ヴィルム・カン・ラスムセン教授・学科長。経済地理学者。「メガプロジェクトにおける世界の第一人者」(KPMGによる)であり、同分野において最も引用されている研究者。『メガプロジェクトとリスク』などの著書、『オックスフォード・メガプロジェクトマネジメント・ハンドブック』などの編著多数(いずれも未邦訳)。ネイチャー、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、BBC、CNNほか多数の著名学術誌や有力メディアに頻繁に取り上げられている。デンマーク女王からナイトの称号を授けられた。

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