米国債「格下げ」で一時波乱も--政治的対立で迷走する米国の債務上限引き上げ交渉の行方


そうした最悪事態を避けるために債務上限のみ切り離して引き上げたとしても、多少の格下げは避けられないだろう。事実上の基軸通貨国の債務とはいえ、政争の具となって、投資家をこれほど冷や冷やさせる国債が「最上級格」というのは、違和感が否めなくなっている。
 
 ファンダメンタルズ面から言っても、公的債務残高は対GDP比で今年100%前後(国際通貨基金[IMF]の予想では99%)が見込まれ、とっくの昔にトリプルAから陥落した日本(11年229%予想)や事実上のデフォルト認定となったギリシャ(同152%)よりマシとはいえ、国際的に見てかなりの高水準となっている。

もし米国初の格下げとなれば、ドル安とともに株価が調整、長期金利にも上昇圧力が一時的にせよ高まる可能性がある。

もっとも、最小限の格下げならば、影響もそれほど長引くことはないだろう。「米国の支払い能力自体が大きく変わるわけではない」(河田氏)からだ。また、「米国債を大量に保有している連邦準備制度理事会(FRB)や米銀は、1~2ノッチ(段階)の格下げでは手放さない。むしろ、米国債の利回りが上昇すれば、金融規制強化の影響もあって、米銀はさらに米国債の残高を積み増す公算が大きい。自国通貨であるドルの下落ならば評価損にもならない」(桂畑氏)。

また、日本や中国も自国通貨に上昇につながる米国債売りには踏み切れないはず。他のアジア諸国も、ドル安に対して為替介入するため、結果的に米国債保有が増え、ドル安定化につながる。そのため、大幅なドル安や金利上昇は避けられそうだ。

それにしても、政府・議会の政治的な思惑によって政策論議が迷走し、経済や国民生活がリスクにさらされるというのは、本末転倒の事態だ。ただ、「小さな政府」か「大きな政府」か、という米国政治の基本路線を左右する重要な論争ともいえ、景気減速や失業率高止まりで再選に黄信号が灯りつつあるオバマ大統領にとっても、簡単に譲歩できない駆け引きでもある。当面、事態の成り行きから目を離せない。
(中村 稔 =東洋経済オンライン)

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