米国債「格下げ」で一時波乱も--政治的対立で迷走する米国の債務上限引き上げ交渉の行方


そうした事態を回避する「奥の手」として、財政赤字削減策の合意を債務上限引き上げの条件から外し、債務上限のみ引き上げることで両党合意を図ることも考えられる。
 
 1970~90年代にも、財政悪化で予算の執行停止が頻発したが、そのたびに与野党合意の特例法によって、暫定的に予算執行を可能にし、国債の元利払いに対応したことがある。

今回も、たとえば来年の大統領選までの国債発行分だけ上限を広げることで、デフォルトを回避しつつ、財政論争を続行する。そうすれば、国民生活や金融市場の大混乱は防げる。

しかし、大統領選まで財政赤字削減策の合意が棚上げとなり、米国債に対する信認がジワジワと低下する危険性も高まることになる。

また、国債を発行できなくなっても、税収を優先的に国債の利払いや償還に充てることで一時的にデフォルトを回避することも理屈上は可能だ。しかし、この場合も、他の財政支出にしわ寄せが生じることになり、長い期間続けることは難しい。

財政赤字削減で決着なら市場は好感、債務上限引き上げのみなら格下げか

期限までに財政赤字削減策で合意できれば、米国債のトリプルA陥落は回避される可能性は高まる。共和党ベイナー議長の2段階引き上げ案で妥結した場合でも、「共和党はさらなる財政赤字削減策の追加を狙うことが見込まれ、格付け会社も当面、現状維持を続ける可能性が高い」(第一生命経済研究所の桂畑氏)。金融市場はいったん好感し、株価が上昇、長期金利は落ち着くと考えられる。

一方、財政赤字削減策に合意できないまま、デフォルトという事態になれば、格付けは一気に落ち込む。長期金利は高騰、株価は暴落し、金融市場は大混乱する。各種給付金の支給など政府サービスが一時的に止まり、政府機能が凍結する。いくら何でも、このシナリオは考えづらい。

「市場も、デフォルトまでは予想していない」(河田氏)。

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