図表1、2から購買力平価と市場レートの比較をすると、次のとおりだ。
図表2に見る通り、1980年代前半には、市場レートが購買力平価より円安だった。つまり、この時代には、円は過小評価されていた。これは、図表1で、市場為替レートが実質実効レートより円安だったことに対応している。
1980年代後半からは、市場レートが購買力平価より円高である時代が続いた。つまり、この時代には、円は過大評価されていた。これは、図表1で、市場為替レートが実質実効レートより円高だったことに対応している。この傾向は、特に1990年代後半や2010年頃に顕著だった。
ところが、2013年からこの関係が逆転し、市場レートは、購買力平価より円安になった。これは、大規模金融緩和政策導入の影響だ。とは言っても、市場レートと購買力平価の乖離は、さほど大きなものではなかった。2015~2019年には、市場レートは、購買力平価より1割ほど円安だった。
現時点での円安は「歴史的」
これが一変したのが、2022年からだ。市場レートが購買力平価より円安であることに変わりはないのだが、両者が大幅に乖離し、市場レートは、購買力平価に比べて大幅に円安になった。
IMFによる2024年の推計値では、購買力平価が1ドル91.378円であるのに対して、市場レートは148円だ。市場レートと購買力平価がこれほど乖離したのは、1980年代前半以来のことだ。図表1では、80年代前半の乖離のほうが大きいが、図表2では、現在の乖離の方が大きい。この意味で、現時点の円安は「歴史的」なのである。
こうなったのは、もともと物価上昇率の差がある上に、市場為替レートが急激に円安になったからだ。これは、世界の中央銀行が金融引き締めに転じた中で、日本銀行だけが過度な金融緩和を継続したことの結果だ。
この状態は、日本経済にさまざまな問題を引き起こしている。この惨状をどう立て直していくかが、日本銀行に課された大きな課題だ。
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