「私が働く学校に限った話かもしれませんが、今は昔と比べて、労働環境はよくなったと思います。『教員の労働環境がブラックだ』というのが大きな問題になった結果として、労働時間自体は減っています。
例えば昔は休日に先生向けの研修会に行って、平日はずっと生徒の相手をしていました。夜遅くまで学校に残って、つきっきりで生徒対応をすることも少なくありませんでした。
それが、残業の規定が生まれたことで、休日朝から晩までの勤務や21時22時を過ぎてまでの残業も大きく減りました。ただ、それはうちの高校が一般企業と同じ給与ルールになり、残業も時給換算して上限まで払ってくれるようになって、働き方のバリエーションが増えたことが大きいと思います」
「多くの学校は今まで通りだと思うので、保護者対応や業務が増大していると思いますが」との前置きされたうえで、鈴木先生の学校では「労働環境自体は昔と比べてよくなった」と語ります。教員の働き方改革は、現場で一定の成果が出ているとも捉えられる一方で、それによって新たに生まれた問題についても教えてくださいました。
密なコミュニケーションが大きく減った
「私の高校では、生徒との密なコミュニケーションの頻度は大幅に減りました。ワークライフバランスなんて言いますけど、昔はワークもライフも境目が曖昧だったんですよ。
昔は、家庭訪問に行って、そのまま生徒に『ちょっとラーメン食いに行こうぜ』と声をかけたりしました。それで、自分の行きたかったラーメン屋に連れてって、『美味いな!』と感じながら、生徒といろんな話をして。『じゃあ明日、学校で待ってるからな!絶対来いよ!』などと指導していました。
あの時間は、自分にとっては仕事の時間でもあるし、プライベートの時間でもあった。でも、今そんなことをやったら、『生徒を勝手に連れまわすな!』って怒られますよね」
おおらかな時代だったからこそできた、立場を超えた人と人との交流も、規制が相次ぐ現代社会では、できなくなってしまったようです。
「最近はコンプライアンスを意識しなければならないからこそ、指導に対して、今までとは全然違う神経を使わなければならなくなりました。たとえば今は、家庭訪問の際に家に子どもしかおらず、親がいないときには、家に入ってはいけないんです。それは不法侵入だと言われてしまいます。
また、学校で生徒と話をしているときでも、その生徒の後ろ側にいる親のことを考えてしまいます。『今この生徒にこんなことを言ったら、後からここだけ切り取られて、親からクレームが来たりするんじゃないか』と思うと怖くなって、あまり強い言葉を使ったりすることができません」
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