韓国総選挙「タマネギ男」政党の人気がなぜ高いのか 「法難」訴え曺国元法相の新政党が選挙戦の目玉に

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実は、「共に民主党」では今回の小選挙区の公認候補選定で、同党の李在明代表が自身に近い人物を露骨に優先して現職を相次いで外した。これが大きな波紋を呼び、進歩派有権者たちの気持ちがだいぶ冷めているのだ。

2024年3月初めの時点では「野党惨敗」を予測する報道まで出ている。そこに曺国氏がさっそうと救いの手を差し伸べた形となり、今では両党を合わせた進歩派陣営が大勝するという予測が広がっている。

「法難」を訴えて与党に対抗

曺国氏は尹錫悦政権のことを「検察独裁」と断じる。そこには多分に自身が受けた取り調べと起訴への私怨が込められているのだが、4月10日に野党側が大勝して尹大統領を弾劾に追い込むことを目標に掲げるほどの強気だ。

私は4月2日に開かれた「祖国革新党」の仁川支部結成式に行ったのだが、会場は相当な熱気に包まれていた。会場に駆けつけた人たちは曺国氏の一言一言に大きく頷き、話が盛り上がると「チョ・グク! チョ・グク!」と連呼。その光景を見て思い浮かんだのが、「法難」という言葉だ。

ソウル首都圏・仁川市で、祖国革新党の党支部結成式の様子(筆者撮影)

曺国氏が元法相だったからではなく、「法難」という言葉は「仏法を広げる際に権力者から受ける迫害」を指す。彼は「検察改革を推進しようとしてその検察という巨大権力から迫害を受けた」と自らを定義し、それを熱狂的なほどに信じる人たちが急増しているのだ。そうした高揚感が醸成された状況において、「検察独裁」というフレームは実に響くようだ。

韓国政治の内情に詳しいソウルの知人たちに話を聴くと、みな一様に「確かに大統領は検事出身だが、政権全体が元検事だらけというわけではない」と述べ、「検察独裁」は誇大だと眉をひそめる。

だが、「法難」は仏法を信じる者たちを弱めるのではなく、むしろ結束を強める場合が多い。そうした心理的なメカニズムが、「祖国革新党」ブームの本質のように思える。それは、アメリカでトランプ前大統領がさまざまな罪で起訴されればされるほど支持者たちの結束が高まる現象に通じるものがある。

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