繁華街で急増中「酒のヤマト」は2024年問題も無風 カクヤスが急回復を遂げた"逆張り戦略"の中身

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しかし、お笑いコンビ・バナナマンを起用した広告効果や家飲み需要の拡大で、コロナ禍で家庭向け宅配への注文が急増。狙い通りだったが「個人飲食店からの注文が回復すると、素早い配達ができなくなる」(佐藤会長)と店舗のキャパシティ不足に危機感を抱いた。飲食店が多いエリアを中心に別途、業務用専用の小型倉庫の増設を進めることになった。

さとう・じゅんいち 1959年生まれ。筑波大学卒業後、祖父が1921年に創業したカクヤス本店(現カクヤスグループ)入社。1993年に代表取締役社長、2022年取締役会長、2023年より代表取締役会長兼CEOを務める(撮影:梅谷秀司)

従来、個人経営の飲食店と密接だったのは、地域に根ざす酒販店だ。しかし2021年度の酒類小売業者の業態別小売数量は、コンビニでコロナ前の2019年度比約1%、スーパーで同約4%増加したのに対し、一般酒販店では同約26%も減少した(国税庁調べ)。

取引量が激減する中、飲食店のように協力金が酒販店に支給されることもない。多くの酒販店が配送トラックや人員、配送回数の削減などのコストカットを余儀なくされた。

稼ぎ時でも休業する酒販店も

現在の外食産業は回復傾向にあるが、酒販業界は回復途上。削減した人員を再び補強することは人手不足で難しく、毎日配送に戻せないまま、需要に対して供給が追いつかない状態となっている。

多くの酒販店が弱体化した中で、当日注文で即配対応できるカクヤスのサービスが受け皿となった。稼ぎ時でも人手不足で休業する酒販店が増えたため「去年のゴールデンウイークは、契約していない飲食店から100件程度の注文があった。当然その顧客は刈り取っていく」(佐藤会長)。

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