繁華街で急増中「酒のヤマト」は2024年問題も無風 カクヤスが急回復を遂げた"逆張り戦略"の中身

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歌舞伎町から近くに位置する西新宿だが、既存拠点への注文量の多さや配達距離の問題で開拓しきれていなかった。西新宿SSは昨年10月1日の稼働以降、売り上げを順調に伸ばしている。繁華街エリアのドミナント戦略を強化することで、拠点間の距離が短縮されて急な注文などへ柔軟に対応できるようになった。

小型倉庫には看板がなく、一般客は買い物をすることができない(提供:なんでも酒やカクヤス)

カクヤスグループの佐藤順一会長は「物流網の密度はまだまだ高められる。個人経営の飲食店を中心にさらにシェア拡大を目指す」と意気込む。

従来、カクヤスは大手チェーン居酒屋を得意としてきた。毎日の大量注文に応えるため郊外に大型配送センターを構えてきたが、コロナ禍で外食産業は壊滅的な状況に陥る。

カクヤスは2021年3月期に26億円、2022年3月期は33億円の営業赤字に転落。2021年5月に伊藤忠食品や三菱食品に対し、第三者割当増資で約22億円を調達して切り抜けた。

赤字でも断行した先行投資

業績が苦しい中で行ったのが、コロナ後を見据えた先行投資だ。カクヤスは飲食店の動向を1年間観察し、宴会需要に支えられていた大型店舗をもつチェーン店よりも個人店の回復が早いだろうと判断。手薄だった個人飲食店の開拓へ舵を切った。

新規開拓で必要となるのが小型倉庫だった。チェーン店からの注文内容や量は比較的予測しやすく、注文忘れも少ない。一方、個人飲食店からは「今からウイスキーを1本、できるだけ早く届けて」といった注文が舞い込んでくる。こうした要望に応えてきたのは、家庭向け宅配サービスも行う店舗(「なんでも酒やカクヤス」)だった。

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